第55話 英雄
俺たちはそのあと何試合かアレスと二人で見ていた。俺もそろそろ次の準備をしようかなと思っていた時に先にアレスが立ち上がりゆっくりと体を伸ばし始めた。
「うっし!行くか」
「えっ?どこに?」
俺は今の一瞬で出た疑問をぶつけるように尋ねる。
「俺も出るんだよ」
「いや、お前エントリーしてないじゃん」
亜高速でツッコミを入れるがアレスはニヤッと笑って、
「欠場者が出たんだよ。その代わりに出てくれってクシフォス先生に頼まれたんだ。しかも初戦からイロアスとだしな」
今の発言だけで大量の大事な情報が出た気がしたがもう聞くのもめんどくさそうだったので
「はぁ〜、早よ行ってこい」
向こうへ行けと手をヒラヒラさせてパッパッといかせるのであった。
「さて、次の一戦はどうやら対戦相手が変わっているようです。青コーナー、一年主席にし4人目の一階級の天才。イロアスー」
観客から大きすぎるくらいの歓声が上がる。当然だ。なぜならイロアスは1番の注目株だからな。
その歓声の中を飄々とイロアスは歩いてきて決闘場へと上がった。
「次に赤コーナー、急な登場。一年戦鬼ことアレスー!」
観客はどうでもいいのだろう。歓声が一気に冷める。
(さぁ、この中でどう戦うアレス)
実際俺はアレスの戦いを見るのは初めてだ。実際楽しみだし、イロアスにどこまでできるのかに関しては期待しかない。
「さてと、それではスタート!」
開始のコングが鳴る!
アレス視点
「イロアス。今日は勝たせてもらうぜ」
俺はコングの後にイロアスにそう伝える。だが、しかしイロアスは俺の方を全く見ていなかった。
(俺のことは眼中に無いってか)
悔しさとかが色々込み上げてくるのをそのまま魔力を練り上げ、身体強化で一気に距離を詰める。
(獲った)
魔力を乗せた拳がイロアスの顎へと向かう。
「なっ?!」
だが俺の拳はその直前でイロアスの素手によって受け止められた。危機感を感じすぐさま距離を取ろうとする。しかしもう手遅れだった。イロアスは俺の手を掴んだまま俺を壁まで投げ飛ばす。
「いっつ!」
壁に手をかけながらゆっくりと立ち上がる。ダメージ自体はそこまで大きく無いがどちらかと言うとショックの方が大きかった。
「なぁ、アレスさん。力の差がありすぎるよ。もう降参してくれない」
ただどこかをみながら俺に追い討ちをかけるようにそう言ってきた。
「絶対にいやだね。せっかく楽しみにしてたんだ。最後まで付き合ってもらうぜ!」
自分が戦闘狂なのはわかっている。それでもここまで強い相手は久しぶりだった。今さっきのショックも今は既に嬉しさに変わっている。
「そう、ですか。なら、一つハンデに僕の術式を教えてあげるよ。僕の術式は"英雄"発動すると全ての能力が底上げされ、窮地になればなるほど力を増す術式だよ」
なるほどなと思った。シンプル故に強力な術式。そこにイロアス自身の戦闘センスも上乗せされる。そら化け物だな。
「もう、終わらせるよ」
そう告げて英雄を発動させる。だが俺もまだ術式を使っていない。
「じゃあ俺も使いますか。久々だけど行けるか、」
そう言って右腕の上に左手を乗せる。
「唸れ!壊せ!"鬼王の右腕"(オグロルゥカー)!」
術式を叫ぶのであった。
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