第53話 決戦祭始まる

「さぁ、今日は待ちに待った英雄決戦祭!みんな、盛り上がってるかい?!」

「「「ワァー!!」」」

実況の人が会場を盛り上げる。それに答えるように会場も全力で盛り上がる。

「盛り上がってきたねー」

「そうね」

俺とアリスは心ここにあらずと言った感じで控室で話していた。

「さてと、初戦は俺だな。開幕戦だし、派手に行くか」

体をグゥーと伸ばしてしっかり気合いを入れて椅子から立ち上がる。

「行ってらっしゃい」

「あぁ、見せてくる」

アリスの方を振り返らずにまっすぐ控室の扉を開け、一直線で決闘場の舞台の入り口のところまで行く。

「さーて、やってまいりました。本大会、初戦を飾る大事な試合。青コーナー、去年はくしくも3位、今年こそは優勝を狙う。3年、ソリア=グリュンヒルデ!!」

会場が歓声に包まれ反対側の入り口のところからロン毛の槍を持った金髪の男が出てきた。

「きゃー!ソリア様!」

一部の女性ファンから黄色い歓声が湧く。それに手を振るイケメン。俺はこういうやつが嫌いだ。前世から本当に嫌いだ。

「続きまして、赤コーナー。異例も異例、術式を持たないダークホース。一年、キリア!!」

ゆっくりと出ていき舞台へと上がる。周りから聞こえてくるのは歓声ではなく、罵倒だった。

「下がれよ。術式無し!」

「引っ込め、ノーマジック!」

そう、先輩から入学してすぐについたあだ名がノーマジックだった。

(殺そうかなこいつら。)

静かに拳を固めるが、すぐに拳をしまう。

「やぁ、キリアくん。せいぜい僕の引き立て役になってくれ。」

「あっそ、じゃあ俺はここに宣言するぜ。俺はここから一歩も動かない。動いたら俺の負けでいい。」

少し腹が立って、そんなことを口走った。だが、後悔はないし、これでいいと思っている。すると観客席から

「調子のってんじゃねぇぞザコが!」

「死ねよゴミ!」

もうガン無視することに決めているのでもうどうでもいい。

「それでは開始します。」

実況がそう言って開始のコングが鳴り響く。

「それじゃ行くよ。」

イケメンが俺との距離を詰め、槍を連続で突いてくる。まぁ、白繭を使っているので届くはずがない。

「なんで、なんで届かない?!」

(もう完全に焦りきってるな。早すぎるだろだけどもう終わりにするぜ)

「終わりだ」

"咲け"黒薔薇

すると、イケメンの体から少し大きめのバラが胸の中心あたりに咲いた。

「これがどうした!」

そう言いながら術式を発動しようとしたのだろう。もう無駄だというのに。

「なぜ!なぜ使えない!」

「黒薔薇は相手の魔力を吸いきった時に初めて咲くんだよ。戦いが始まってすぐにお前に植え付けたんだけど気づかなかったか?練魔を使えないお前じゃもう俺に勝ち目はないよ。」

真実を伝えてやると、イケメンは無様にも膝から崩れ落ちた。

「しょ、勝負アリ!勝者、キリア!!」

終了のコングが決闘場に鳴り響いた。

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