第52話 英雄決戦祭近づく
「もう暑いな。」
アリスと二人で登校しながらそんなことを呟く。最近は2人で登校していても視線がなくなった。
「まぁもう六月半ばだからね。」
アリスは一滴の汗もかかずに隣を歩いている。
「お前、周りを冷気で覆ってるだろ。」
「何か悪いことでも。」
「べっつにー」
せこいなと思いつつジロっと顔を見てやったが特に面白い反応もなかったのでそのまま少し早足で学校へと向かう。
「さて、そろそろ決戦祭も近づいたきたことだし、今日は決戦祭に出る人を募りたいと思う。」
クシフォスが帰りのホームルームが始まった途端に募集をかける。
「俺は出るよ」
俺は誰よりも早くに手をあげる。実際自分の実力を見せる必要があったのでこれに出るのが手っ取り早い。
「私も、出なきゃいけないから」
誰よりも真剣な面持ちで俺に次いで手をあげるアリス。
「他は誰も出ないのか?」
あまりにも少なかったのかクシフォスが全員に声をかける。まぁ多分1人は爆睡して聞こえてないが、
「リリアとかどうだ?」
「お兄様に勝てないのに出る意味ってあるの?」
リリアはキョトンとした顔で答える。全く出るという判断がなかったのだろう。
「そうか。ならこの二人だけで大丈夫だな。この二人はこの後出場者の集まりがあるから行くように。ではさようなら。」
「「さようなら」」
「さてと、行くか」
「そうね」
俺たちはみんなが帰るのを見送ってから体育館へと歩き始める。アリスの顔が少し強張っていたような気がするが気のせいだろう。
「おっと、まぁまぁいるな。」
俺たちが体育館に来る頃にはほぼ全員が集まっていただろう。50人程度の人たちがいた。
「あっ、アリスさん、キリアさん」
後ろから声をかけられたので誰かと思い振り返ればイロアスとか言うイケメンだった。
「お前も出んのかよ」
「一応主席として」
その顔はどこか曇っていた。というよりは俺のことを睨んでいるよだった。だがそんなことを気にする玉ではない俺はガン無視してその場を後にする。
「あ、久しぶりですね。副会長。」
見覚えのある人を見つけたので後ろから話しかける。
「やぁ、キリアくん。君も出るのかい?」
前よりもはるかに優しくなった顔で聞いてくる。なんやかんやあってこの人とは仲がいいのだ。
「はい。今回、優勝するのは俺です」
自信満々に宣言する。そこまで大きい声を出した訳では無いがそんな言葉を聞いた周囲の視線を集める。
「ははっ、威勢がいいことは何よりだ。だけど、君は僕に負ける。何があっても絶対にだ」
そう言い残してラーサは体育館の奥の方へと姿を消していった。
そのあと、俺は最後の言葉を気にしつつ出された契約書を書いて提出し寮へと帰った。この時、俺たちは知らなかった。この決戦祭の結末が悲惨なことになることを。
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