第50話 剣神対最弱
「よし、それじゃ今から実践訓練を始める。私に一撃入れたやつから今日は帰れるからな。」
クシフォスのその一言でみんなのやる気のボルテージはMAXに上がる。なぜなら早く帰れる可能性があるからだ。この前の一件で俺たち学園は多大な犠牲を払っている。それをなくすために学園側も考えたみたいだ。
「じゃまずは誰から」
「僕からでお願いします。」
名乗り出たのは美少年も美少年、主席のイロアスだ。
「よし、じゃ行こうか。」
合図がかかり、実践が始まる。しかし、勝負は一瞬だった。
「これで、魔階級一級かい?私たちも舐められたものだね。」
クシフォスの圧勝だった。鋭すぎる剣先に為すすべもないと言った感じだった。
(師匠のあんな本気久しぶりに見たな。)
剣を向けられ尻を地面についたイロアスは悔しそうに下を見ている。
「さぁ、次は誰がくる。」
クシフォスが俺たちを急かしてくる。主席が簡単に負けたのだ。全員が動揺していた。
(しゃーないか)
「俺がいくわ。」
俺は重い腰を上げてクシフォスを見つめながら、歩いていく。
「負けて後悔するなよ。弟子」
「どうせ、俺以外じゃ勝てそうにもないしな。逆に、負けてくれるなよ。師匠」
そして、そのまま同時に距離をとり、決闘を始める。
クシフォスは距離をとりながら魔法を連続で打ってくる。
[風魔法"風斬"]
俺はそれを連続して周斗でいなしきる。しかし、師匠は俺が風斬を切って出た砂煙の中を突っ込んで距離を詰めてくる。
"剣神流、四の太刀"虚"
上段斬りに俺は対応したはずだった。しかし、斬撃がきたのはその逆、下段だった。俺はそれをギリギリで交わして、ダメージを最低限に抑える。
「ちっ!」
それでも常人ならほとんど致命傷の攻撃だった。
「本当にあんたのその2種の魔力嫌いだよ。」
「だってそれは僕だけの特権だからね。」
とりあえず一人称が僕に戻っていることは置いといて、実はのところクシフォスはハーフエルフである。半分が人間の子供である。それゆえに術式を持ち、自然の魔力も使えるチートなのである。
「ふぅー、まぁ負けられねぇよな。ここまできたら」
俺はその瞬間に小さく連続で跳ね始める。
「いいよ。受けてあげる。」
「逃げてもいいぜ。この技はあんたの技を入れても最速の技だから。」
そう言った次の瞬間おれは、クシフォスの後ろにいた。
「なにが起こったの?」
アリスなどが驚愕の表情を浮かべる。それと同時にクシフォスの左腕から血が滝のごとく流れ始めた。
「久しぶりで反応しきれなかったか?これが神滅流"ニノ太刀"神速だぜ。」
「反応はしたはずなんだけどな。瞬時に避けれるようになっていたのか。完璧に一撃入れられたよ。」
クシフォスは俺の技に反応し、瞬時に剣を振り下ろしてきた。俺はクシフォスの剣をギリギリのところで避けて剣を振り下ろした腕に一撃を入れたのだ。
「剣神の術式はシンプルに剣術の極限強化だろ。それに一撃剣で入れたんだ。俺も大したもんだろ。」
クシフォスに対して皮肉混じりにそう伝える。
「2年見ない間に強くなったね。よし、キリアは帰っていいよ。」
笑顔で俺に向かって告げる。その笑顔には嬉しさと寂しさ半分といった感じだった。
(あんたのそんな顔はあんま見たくねぇよ)
「あぁ、じゃあ俺は帰りますね。」
俺は見ないふりをしてその場を立ち去った。いつも余裕ぶっている人のあんな顔を観るのは少し辛かった。
(さてと、かえって寝ますか)
速攻で切り替えて部屋へと戻るのであった。
そして、部屋にアリスが帰ってきたのが日を跨いでいたらしい。
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