第43話 怠惰対最弱

「もう、諦めたら?」

俺に呆れ顔でそう言ってくる少年

「諦めたらそこで試合終了なんだよ。」

ボロボロになった体を動かして防御に専念する。

「なぁ、一つ聞いていいか?」

「まぁ、そこまで耐えたご褒美に一つだけね。」

少年はキャンディを加えながら目をつぶりながら質問を受けてくれるようだった。

「じゃあ一つ、お前は何でその年齢でその眼をしている?」

そう、俺はこの眼を知っている。全てを諦めた絶望仕切った目。まるで前世の俺の、幼少期の周斗にそっくりだったから。尋ねると少年の顔があからさまに曇る。

「言ったところでわからないだろ。お前に!親に捨てられる気持ちが!」

少年は怒鳴りつけるように言ってくる。ただの一言であからさまに冷静さを欠いた。

「わかるさ、俺も同じだから。」

同情の目を向けながら俺は少年にそう伝える。

「お前なんかにわかるわけないだろ!」

少年は空気の波動と剣を連続で飛ばしてくる。おれは再度作り上げた白繭で全てを弾き切る。

「なぁ?!何でだよ!」

少年は驚きを顔に浮かべる。

「気づいてなかったのか?もうお前の攻撃は見切っているよ。お前の怠惰はめんどくさいと思った現象を代わりに術式がやってくれるってとこだろ。だけど起こした現象の魔力出力を俺が上回ってやればいいだけの話だ。何の問題もない」

少年は後退りをする。その顔には今さっきまではなかった恐怖が滲み出ていた。

「なんで、なんでだよ?!何でお前は魔力出力がどんどん高くなっていってるんだ?!」

俺は鞘に刀をしまいながら答える。

「説明するのだるいからやだ。でも、安心しろ。次の一太刀で全てが終わる」

そして、誰もが見たことがある左足をひき、右手で刀を握った居合術のような体制になる。

「そんなことがあるか!」

少年は作った剣を持って高ぶり荒ぶった感情をぶつけるように飛び込んでくる。

「あぁ、終わりだ」

間合いに少年が飛び込む。その瞬間、少年の右の腰あたりから左の肩付近までにかかって一筋の鮮血の線が舞う。

"神滅流"[一ノ太刀]居合術"虚空"

「なんで、届く、」

「これは師匠と完成させた俺だけの剣術だ。虚空は空間もろとも全てを斬り裂く」

倒れ込む少年に対してそう告げる。そして、倒れた少年のところにゆっくりと歩み寄る。

「お前、あの瞬間に少し下がったか。ちゃんと当たってたら即死だったのに」

「そんな、カハっ!簡単に死ねるかよ」

血反吐を吐きながら最後まで自分のプライドを守ろうとする姿にやはり昔の自分を重ねてしまった。

「なぁ、お前の名前教えろよ。流石にお前みたいな小さい子を殺すんだ。罪悪感を軽くするために墓でも建ててやるよ」

同情なのか、それとも自分への慰めなのかはわからないが自然とそんな言葉がもれた。

「ははっ、そうかよ。僕の名前は、              

  だよ」

俺は名前を聞き、驚きを隠せないと同時に心の奥底から憎悪が湧き出るのがわかった。だが、それを隠しながら

「そうか、後は任せな。安らかに眠れ。」

俺はそう言って少年の胸に刀を堕とすのであった。

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