第42話 真の実力
「オラオラ!さっきまでの威勢はどうした?」
血の塊を私に向かって飛ばしてくる。
[氷盾]
氷の盾を作り全てを防ぐ。もうすでに会長は戦闘不能となり後ろで倒れている。そんな私ももうすでに満身創痍だった。体のあちこちから血を流し、出血量じゃいつ倒れてもおかしくなかった。
(この男、強い。)
「あいつがお前らに任せるとか言ったからそこそこやるのかと思ったら全然じゃねぇか。」
男が呆れた顔で私に言ってくる。私はそれを聞いてカッとなってしまって男に突っ込む。
「学ばねぇな。」
そして男の血液によって強化された蹴りを腹に直接受けてしまう。
「カハっ!」
鈍い痛みがお腹に走る。だがまだ倒れるわけには行かない。そう思いもう限界を超えている体を無理やり立ち上がらせる。
「もういいよお前、寝てろ。」
男が瞬時に近づいてきて思いっきり顔面を殴られ、吹き飛ばされ、壁に直撃する。
(もう、ダメかな。私にしてはよく頑張った方じゃないかな。)
そんなことを朦朧とする意識の中で考える。だか、それは違うと瞬時に否定する。
「違う。そうじゃない、キリアが私を信じてくれている。あんなに強い人が私を信じてくれている。それに私がここで負けたら会長も殺される。もう何も失いたくない。今、立ち上がる理由はそれだけで充分でしょ!」
もう限界を超えているであろう体を再び無理矢理起こし立ち上がる。
「もう、出し惜しみはしない!」
私がそういうと、周りに冷気と大量の魔力が走る。
「何する気だ、お前!」
男の表情が曇っていく。そして、私は一点に魔力を集中してこう叫ぶ。
「お願い!力を貸して。白虎!」
すると、私の後方のところが眩しく白く輝き一匹の真っ白な毛色の虎が現れた。
「久しいの、我があるじ」
「久しぶりね。白虎、お願い。また力を貸してくれる?」
不安を顔に出さないようにしたが多分滲み出てしまっているだろう。
「あぁ、勿論だとも!」
苦笑いしながら白虎はそう威勢よく返してくれた。
「面白そうなもん隠し持ってたな!お前!」
男は予想外のことに驚きを隠さずとも喜んでいた。
「ここからは手加減できないから、全力で死なないようにしてね。」
白虎を後ろに控えさせながら花が鍔についた短剣を二つ作り出す。
「白虎、合わせて!」
白虎と同時に姿を消し男に連続攻撃を仕掛ける。私が仕掛けたら白虎が背後から、白虎が仕掛けたら私が背後にといった感じで攻撃をする。
「ははっ!やるじゃねえか」
男は嬉しそうにそれに対応するが、だんだん押されていく。必然的に男の体に傷がついていき、どんどんボロボロになっていく。しかし、男はまだ余裕のある笑みで
「ははっ!おもしれぇ!久しぶりに全力で行かせてもらうぜ。」
"血獣化"
男がそういうと禍々しい魔力が膨れ上がる。そして血が全身を覆いまるで二足歩行の獣のような姿になった。
(キリアと同じ感じがする。あの刀の纏うタイプか?)
私は、これからの長期戦は不利だなと考えていた。
「じゃ、いくぜ。」
男が襲い掛かろうとする。
しかし、男の動きが急に止まる。
「もう、遅いわよ。」
私はゆっくりと男に近づく。
「私の魔法は氷を作り出すだけだと思った。私は白虎の力で物質から水を出して、水を氷にすることができる。要するに水分を含むすべての物質は私の術式対象ってわけよ。意味わかるかしら、人間は私の術式対象よ。」
男はどんどん凍っていって動かなくなっていく体の中、口だけを動かす。
「お前は、一体」
「ただの、王族よ。小さな国のね。」
一歩も動けなくなった男に対して、そんなことを言うと同時に白虎が消える。そして、私は地面に膝をつく。
「はぁ、はぁ、はぁ、危なかった。もう少しで戦闘中に魔力が切れるところだった。早く、早くキリアのところに行かないと、」
その瞬間、視界が暗転して私は意識を落とした。
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