第39話 異変
「では、魔の森に行ってきて指定されたモンスターを狩って来てください。」
師匠がそんなことを生徒たちに伝える。今日は実習訓練でエルフの里との出入り口がある魔の森に来ている。俺は、隣にいるイロアスと二人で魔獣を討伐しなければならない。
「なんで、お前と一緒やねん。」
「まぁ、そう言わないでくれよ。」
渋々重い足を上げて森に入っていく。二人無言で足を動かし、森のだいぶ深部まで来たところで俺は足を止める。
「なぁ、変じゃないか?」
「何がだい?」
「いや、魔獣の数が少なすぎる。」
俺は一つの異変に気づいた。今さっきからずっと魔力で索敵しているものの何も引っかからない。雑魚の魔獣一体もだ。
(おかしいな。ここまで少ないのは。何かあったのか?特別に魔力に異変はない。じゃあ、何だ。)
わからないなと思い天を仰いだ後に、下をふとみる。すると、下からは大量のおかしな魔力があった。
(この魔力、まさか!)
「嫌な予感がする!イロアス!急いで学園に戻るぞ!」
俺がそう叫んだ瞬間、地面から地響きが起こり、地面が割れおれと因縁しかない魔獣が2体姿を現した。
「ちっ、遅かったか、久しいな。マナイーター」
あの日、倒した化け物が姿を現したのである。だが、今回の俺は冷静であった。
「イロアス、一体は頼む。俺は片方をやる。」
「あぁ、わかったよ。」
二人揃って臨戦体制をとる。嫌でもあいつは魔階級一級だ、負けるはずがないと思ったので一体は任せる。そして、俺はゆっくりとマナイーターに近づく。
「3年ぶりか?まぁ何年でもいいや。そこから動くなよ。」
俺は殺気を放ち続けながら近づく。それゆえかマナイーターは一歩も動かない。そして、手が届く距離まできて危機感に気づいたのかマナイーターが両手を俺に向かって振り上げる。
「終わりだ、」
俺はそう言って手をこいつの体につけて
"乱魔"
技を発動させる。当然のごとくマナイーターの行動が停止した。
(こいつは常に外骨格を術式で覆っているからな。そこを乱魔で崩してやればすぐに行動は止まる。)
戦い終えてイロアスに加勢に行こうとするが、そこにはボロボロになったマナイーターがあった。
「こっちも終わったよ。」
イロアスがあるいて近づいてくる。
「お前本当に強かったんだな。」
驚きの表情を顔に浮かべる。
「まぁ、一階級だからね。」
余裕だと言わんばかりの表情で答える。
「おし、飛ばすか。」
俺は纏魔"速"を使って走り出す。これにもイロアスはついてくる。この速度についてこれるのはせいぜい、師匠と精霊王ぐらいだ。
(こいつまじでやるな。)
とりあえず全力で飛ばしていると道中で1人の人物を見つける。
「アリス!お前もいくぞ。」
マナイーターと戦っていたアリスを抱き抱えて全力で走る。
「ちょ、何!」
「簡潔にいうぞ!多分、学園のアーティファクトが狙われてる。だから、学園に戻る。てかお前、セリアは?!」
「あれと戦ってる最中にはぐれたのよ。」
痴話喧嘩をしながらも森を抜けようと全力で走り続ける。そして、魔力の壁の前で止まる。
「チッ!結界か!あ?でも俺通れるぞ」
「私もだ。」
アリスと俺は簡単に結界を通る。
「僕はダメみたいだね。」
イロアスがやれやれと言った感じのポーズをとっている。
「多分、出入りの禁止を一階級だけに絞ってるね。僕はここでみんなの安全を守るよ。そっちは頼む。」
冷静なイロアスは淡々とそう告げ森の中へと戻って行った。だが、俺は心底御立腹だった。
「えっ?何俺舐められてるの?」
弱いと勘違いされているのか少し腹がたちながらも2人で学園へと戻るのであった。
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