第38話 学園散策
「では、グループに分かれたと思うので担当の先輩のところに行ってください。」
クシフォスに言われ、渋々先輩のところへといく。今日は学校散策の日だ。どこに何があるかを覚えるためにするらしい。別にこれ自体が嫌なわけではない。ただ、メンバーが嫌なのである。
「お兄様、今日は一緒に回りましょうね。」
「だから!キリアから離れなさい!」
「リリアさんは本当にお兄さんが好きだね。」
そう、首席から第四席までが同じグルーブなのだ。そして、先輩は生徒会長と副会長とかいうわけわからんめんどくさそうな2人である。まぁ、実質生徒会へのお誘いと言うわけだ。
「はぁー、」
「キリアさんはどうしたんですか。」
イロアスが尋ねてくる。
(こいつもいけすかねぇんだよな。)
俺はこいつのいかにも善人です感が嫌いだ。本当に、
「なんでもないよ。」
イロアスの眼を一切見ずにそう返す。
「やぁ、君たちが学年トップ4の人たちかな?」
そんな元気のいい声が耳に響き、そちらに振り返る。そこには桃色の髪のボブヘアーの少女とメガネをかけた、蒼白の髪をもつのいかにも真面目そうな人が立っていた。
「やぁ、はじめまして。私は生徒会長のシリル。でこっちが、」
「副会長のラーサと申します。私は、はじめましてですね。」
(この2人、そこそこできるな。)
俺は初見でそんなことを思っていた。まぁ、生徒会長の方は入学式の時に見たのだが、
「はい、はじめまして。」
3人ともしっかりと挨拶を返す。俺をのぞいて、
「立ちながら話しても暇だし、歩きながら話そうか。」
元気のいい生徒会長のシリルがそう言ったので全員シリルの後をついていきながら歩く。
「まずは、訓練場から行こうかなー。」
一人で大きな声でそう言いながら先頭を歩くシリル。
「いつも、あんな感じなん?あの人。」
「えぇ、そうですね。少しめんどくさいでしょ。」
俺は副会長と列の1番後ろでそんな話をする。
(こいつとはまだ話があいそうだ)
そして、少し歩いて着いたのが訓練場だった。
「ここは、みんなが1番最初の試験で使った場所だよ。」
そう、ここは俺たちが受験で使った場所だ。人型の鎧の的があり、そこに魔法を当て威力を見ると言ったものだ。すると、急にシリルが俺の方を振り返り、
「で、私、キリアくんの魔力弾みたいな。」
「あんた、受験の時俺のこと見てたのか?」
「うん!すごい魔力持ってるなって思って。」
満面の笑みだが、間違いなく裏があるなこいつと思った。
「私もその魔力弾に興味あるなー。」
アリスも続けて行ってくる。
(てめぇ、日頃そんな言葉遣いしねぇだろ。)
もうめんどくさくなって、
「わかったよ。やればいいんだろ。」
そう言いながら魔力弾を撃つ場所までいく。
「じゃあいくぜ。」
俺がそう告げると、自身よりも大きい魔力弾を作り出す。そして、的目掛けて放った。しかし、的を少しずれたところに魔力弾は飛んでいく。
「お兄様。的の中心からズレてますけど。」
「まぁ、みとけ。」
魔力弾は的の中心よりも右に少々ズレたところあたりに当たる。その瞬間に、
"圧縮"
俺がそういうと的が抉り取られた。
「やっぱりすごーい!」
「なに?今の。」
シリルとアリスが各々の反応をする。
「やっぱりお兄様は世界一です!」
自慢げにお世辞でもあるとは言えない胸を逸らして高らかにいうリリア。
「、、、」
イロアスは何かを考えているようだった。
「ねぇ、キリア。今の何?」
アリスが聞いてくる。
「あぁー今のは魔力弾をあえて大きく作って相手にぶつかった瞬間に中央へと密度を爆発的に上げることで抉り取る力をつけてるんだ。」
「そんなことができるのか、」
イロアスがポツリと呟く。他の奴らは俺を見て何を言っているのかわからないといった感じで見ている。
「まぁ、魔眼がなきゃできない芸当だから真似しようとしない方がいいよ。」
少し誤魔化しながら全員に対してそう告げる。そして、次の場所へと向かうために俺が先頭で歩き始める。
「ここが、決闘場だよ。」
シリルが説明する。
「いや、知ってる。俺が多分1番使ってる。」
俺はツッコむように返事をする。
「そうでしたね。あなたはここで2回も彼女たちと戦っているんでしたね。」
ラーサが無関心な感じで言ってくる。この、愛想なさが俺に似てて非常に親近感がわく。
「まぁ、ここは英雄決戦祭で使うところだからね。」
「なんだそれ?」
俺は首を傾げながら尋ねる。
「キリアさんは知らないのか?一年に一回この学園の最強を決める戦いだよ。」
イロアスが説明する。
「ちなみに、去年の優勝者は私だよ。だから、今年は出れないけど。」
シリルが笑顔でそう言ってくる。どうやら、前回の優勝者は出れないらしい。
「そう、この大会はこの学園の最強を決めるの。だから、、、、、負けられない、」
その隣でアリスが真剣な面持ちで小さな声で告げていた。
「じゃ、次に行こうか、」
シリルがそう言って歩き始める。
「ここが、そうか」
俺はでかい門の前に立ちながらそんなことをいう。唯一この場所だけは気になっていたのだ。
「はい。ここが古代道具(アーティファクト)を管理している場所です。」
ラーサが丁寧に説明してくれる。
(アーティファクトには前々から興味があったんだよな。たしか、)
「アーティファクトは強大な力を秘めているからこんな感じの場所に収めてるんだよ。理事長しか開けれないから生徒は立ち入り禁止だよ。」
シリルが門を叩きながら説明する。
「お兄様、私、興味があったのに残念です。」
「ああ、そうだな。」
二人揃ってがっかりする。
「さて、散策はこれで終わりかな。興味があったら生徒会とかにもきてね。それじゃ、」
最後はすぐに立ち去るシリルとそれを追うようについていくラーサ。あまりにも急だったので、俺たちは唖然とした。もう少し、誘われるかなと思ったが、
「なんかすごい人たちでしたね。」
「あぁ、そうだな。」
どうでもいいので男二人でそんな会話をするのであった。
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