第34話 魔剣ならぬ魔刀

「うん、やっぱりその力まだ全然使えてないね。」

半年ほど精霊王の修行を受けて言われた言葉がそれだ、

「何回も言うけどその力は悪意が強い人だけが生み出せる一般的には"心魔"と呼ばれるものだ。術式を使えない君が使えなきゃこの先強い奴には勝てないよ。」

はっきりと核心を告げられる。

「わかってんだよ。でも、わからないんだよ。」

自分の心魔とはなんなのか、どうすれば扱えるのか、頭でわかっていても体がいや、心が追いついてこないといった感じだ。

「わかった、じゃあユグドラシルの精神の間に行こう。」

ユグドラシルとは世界樹のことである。突然そんなことを言われ唖然としている俺をよそに、その中へと案内され何もない空間に座らされる。

「じゃあ、ここで君の悪意と会話しておいで、多分、眼を瞑って精神中に行こうと思えば行けるはずだから。」

そう言ってユグドラシルから出て行った。ここまでの展開が早すぎて全くついていけてないがとりあえずは切り替える。

(しっ、行くか!)

ゆっくりと俺は眼を瞑った。


         精神世界

「ここが精神世界か、」

そう呟く、俺の精神世界は暗く、黒く、かなり嫌な感じかするところだった。

「おっ、やっときたか。」

そう言って、誰かが俺に話しかける。俺はその人物が誰なのかこの時初めて知った。誰よりも描き慣れた声だった。

「おう、初めましてだな。おれ、」

その人物が俺に挨拶をする。冷静に俺はその人物の方を振り返って真実を語るように告げる。

「やっぱりお前がおれか。いや、佐竹周斗」

そうそれはこの体に転生するまでの俺だったのだ。

「はぁ、やっぱりお前が俺の悪意の部分だったか。」

座り込みながらため息をついてしまった俺。

「どうだ、びっくりしたか?」

周斗はそんな感じでからんでくる。俺は呆れ顔で

「なぁ、周斗お前だったらわかるだろ。俺はお前でお前は俺だ。俺には力がいる。力を貸してくれ。」

そう言う。すると周斗があからさまに笑みを失って、

「絶対嫌だね。俺とお前は根本的に違う。お前は、忘れている。前世で何があったのか、どんな待遇を受けたのか。」

俺を睨みつけた。この目は間違いなく俺が前世でしていた目だった。

(あぁー、そういうことか)

「周斗、お前は勘違いしてる。俺は手に入れたと思っていた幸せを無くした。だから、もう必要ないと思っている。幸せなんて所詮偶像だ。でも、それでも、あの憎たらしい神の顔がチラつくんだ。あいつが俺をみて、笑っているのが容易に想像できるんだ。その顔面に一発ぶち込むまで俺は何度だって力を求める。だから、力を貸してくれ。よこせとは言わない。貸してくれ。おまえも、俺の一つだ。だから力を貸してくれ。」

ただ、自分の本心を、全てに置いて考えていたことを周斗に伝えた。すると、周斗は笑って

「はは!やっぱりお前は俺だったよ。いいぜ、貸してやる。だからあいつを殴る時は一緒に殴らせろ。」

俺を見つめて拳を突き出してきた。

「あぁ、もちろんだ。」

その拳に自分の拳を重ねるのであった。


          現在

「なんなのよその魔力量!」

リリアがそう叫ぶ。

「見せてやるよ。術式のない俺がたどり着いたこのちからを。」

俺の目は元の黒からさらに輝き紅くなっていく。そして、次の瞬間に俺は地を踏み込み音と同等の速度でリリアに切り掛かる。。

「っ!」

リリアはギリギリで切り掛かってきたキリアのことを防ぐ。そして空間を飛ぶように転々と逃げる。だが、

「もう、見えてるよ。」

俺は移動先へと先に移動してリリアを下から蹴り上げる。

「かはっ!」

空中へと舞うリリアのさらに上へと移動した俺がそのまま黒境を使って空中を蹴りリリアに切り掛かる。すると、リリアはニヤッと笑って

「残念ね。私の勝ちよ!兄様」

勝ちを確信したリリアが空間を切り裂く剣を振り下ろす。

「悪いな。俺の勝ちだ。」

その剣を俺は戦意を挫けさせるように斬り切った。そのまま首に峰打ちを入れる。そして、峰打ちによって気を失ったリリアを抱きしめながら下へと下る。

「眼を覚ましたら、久しぶりに兄妹らしく話し合いでもしてみるか。」

そう言って、決闘場をリリアを連れて後にするのだった。

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