第33話 兄妹喧嘩

「用意はいいですか、」

リリアが俺に向かって睨みながら問いかける。

「あぁ、いつでもいいぜ。」

俺は自信満々と言った声と表情でその問いに対して答える。

それを確認した審判係のアリスが

「では、始め!」

合図を出した。始まって瞬時にリリアの蹴りが俺の白繭へとあたる。

「速いな。」

そう感嘆の声を漏らす。リリアが悔しそうな顔をしながら距離を取る。

「なんで、届かないんですか?!あなたも本当に術式がないんでしょ!」

真剣にそう聞いてくる。まだあなたもと言うところを見るとまだ本人だと認識されてないらしい。

「そういう技だからだ。威力を上げない限り俺には届かないよ。」

「そうですか。」

そう一言、呟くと自身の魔力から一つの魔力の剣を作り出した。それを振り上げてゆっくりと振り下ろす。その瞬間にキリアはその場から離れる。

「っ!遅かったか、」

避けるのが遅れた俺は右腕あたりから血を流す。それを神聖力ですぐに治す。神聖力は傷を癒したり、守ったりすることに一般的には特化している。

「なんで、そんなすぐになおるんですか、」

呆れ顔で聞いてくるリリア

「そういう技だからだ。この説明も2回目だしな。それと、お前の術式なんとなくわかったわ。この眼があってもわかりづらかったが、お前の術式は時と空間を操る技だろ。おもしれぇもんもらってんな。」

そう自虐気味に言う。それを聞いたリリアは

「じゃあ私も教えてくださいよ。あなたがそこまで強くなれた理由を何があったんですか。もし、仮にお兄様だったとしてこの5年間で家にも帰って来ずに。」

「まぁ色々あったんだよ。」

そう言って黒の泉を発動させる。

(あいつ、一回で使う術式量が多いのと発動までが素早く正確だから乱魔が使えねぇんだよな。久々、ちょっとスイッチ入れるか。)

黒刀を作りながらそんなことを考える。

「いくぜ。」

地を蹴ってリリアとの間合いを詰める。だが、空間と時間を操れるリリアにとってそんなのを避けるのは容易のことだった。

「遅いですよ。」

背後に回ったリリアが剣を振り下ろす。

「お前がな、」

その剣を振り向き様に弾く。それを読んでいたリリアは、片手だけキリアの体に触れ、

[時間停止(タイムストップ)]

そう言われて、キリアは気づいたら壁のところまで吹き飛ばされていた。

(いってーな!ちっ、思考時間、体の時間全部止められた。厄介すぎるだろ。ダメだ、分が悪い。このままだとジリ貧だな。仕方ねえか。)

「強いよ。リリア、本当に強くなった。だけどな俺も、兄貴のプライドとしてお前にだけは負けるわけにはいかないだ。」

俺が不敵な笑みでアリスに笑いかける。そして俺から禍々しくどす黒い魔力が立ち昇る。

(何かがくる、)

リリアはそう本能が理解したのだろう臨戦体勢を取る。すると、俺のの黒の泉から一本の刀が現れる。それを俺は引き抜きながら

「行こうか"周斗"」

刀の名を告げるのであった。

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