第23話 故郷に帰る

「クレハ生きてるか?」

結果はわかっているが尋ねつつギルマス室の扉を開ける。

「キリア助けて、」

まだ受付嬢に捕まって地面を這って逃げようとしているクレハ

「それにしてもやっぱり可愛いな」

そう感嘆の声を漏らすキリア。実際に可愛い服をきたクレハは天使のようだった。

「いきなり褒めないでよ!」

そう顔を真っ赤にして怒るクレハ。そんなことは完全に無視して

「オーラル、俺らエルカディアに行くわ。」

突然そんなことを告げられたオーラルが焦る

「ちょ、お前エルカディアってお前の、」

しかし、俺はオーラルの話を遮って、話を続ける。

「あぁ。でも行かなきゃならないんだ。そのめんどくさいエルフを帰してやるためにも。」

覚悟が決まった目でそこまで言うとオーラルは呆れた顔をした。

「あぁ!もうわかったよ。行ってこいよ!」

そうちょっと怒りながら言う。

「ありがとうオーラル。それと一つお願いしていいか?冒険者のみんなには黙っといてほしい。ここに半年近くいてあいつらに相当気に入られてるから、言ったら絶対見送りとか言ってくるからさ。それに俺は見送られるタイプじゃないからな」

何を言ってるんだこいつと言わんばかりの顔で俺を見るオーラルが

「あぁ、わかったよ。」

「じゃ用意してくるわ。クレハ行くぞ」

「ちょっとまってよー!」

そう言ってギルマス室を出て行く二人であった。


         翌日早朝

「さて、行くか。」

エルカディア行きへの馬車へと乗り込む。

「じゃ、行きますよ。」

そう言って運転手であろう人が馬車を走られせてくれた。

(色々あったな。まぁ、バカばっかりだったけど)

そんな思い出に浸りながら馬車は門を出る。すると、馬車の前に数人の男たちが立ち塞がった。

「おい!キリア!何も言わずに出ていくなんてそれはないんじゃねぇのか?!」

「キリア!俺まだお前に恩返せてねぇぞ!」

「キリアさん!せめて見送らせてくださいよ。」

そう言ってきたのは冒険者仲間たちだった。

「えっ、なんで?」

「お前はここの軽い人気者だぜ。そんなやつを簡単にいかすかよ。」

奥からオーラルがしてやったぜって顔をしながら出てきた。

「ほれ、軽い餞別だ持っていけ。」

そう言って金が入った小袋を渡される。

「オーラル。ありがとう。」

そう言って笑みを浮かべるキリア。

「てか、お前らはよ退けや。いくれへんやろ。」

泣きそうになりながらもそれを全力で堪えて仲間達に、さっさと退いてもらう。

(あかん、このままおったら絶対に泣いてまう。それだけは阻止せな。)

馬車を走らせる。そして荷台から後ろを見るとみんなが手を振っていた。

「元気でな!キリア」

「キリアさん!お元気で!」

「キリア!今度きたら飯食いに行こうぜ!」

みんな泣きながらそんなことを言っていた。すると、オーラルがでかい声で

「キリア!」

みんなが静まり返った。その空気の中で一つだけ空気を読まない声がさらに続ける。

「帰ってこいよ。」

ゆっくりとしかしはっきりそう言った。

すると、気づけば俺は眼から大粒の涙が溢れ出していた。その時に初めて気づいた。いや、気付かされた。

(あぁ。俺にも帰る場所ができていたんだな。)

「ごめん。馬車止めて、」

馬車を止めてもらい荷台を降りる。そして、みんなに向かって

「半年間ありがとう!死ぬほど世話になった。オーラル、俺に居場所をくれてありがとう!必ず、必ず、帰ってくる!」

「おう、帰ってこい。」

そう言い残して馬車に乗り込むキリア。

「大丈夫なの?キリア」

そう心配するクレハ

「あぁ、大丈夫だよ。」

座り込みながら答えるキリア。そして片手で顔を抑える。涙がまた溢れ出す。出てくるのはオーラルとの思い出だった。


         回想

「おい!キリアいつまでサボっとるんや!」

「キリア!嬢ちゃんリハビリ手伝うんだってな。頑張れよ!」

「キリア!もう少し自分を大事にしろ。」

「キリア!頑張れよ」


「ありがとう。本当にありがとうオーラル。お前がいてくれて本当によかった。」

涙をこぼしながらそう呟くのだった。

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