第19話 再出発

「んっ、」

(ここはどこだ?確かあの時、倒れてそのあとの記憶が、、なんか曖昧だな。)

天井を見つめ考えていると、

「キリア、眼を覚ましたの?!」

腫れている瞼を擦りながら駆け寄ってくる美少女のセリア

「お父様、キリアが目を覚ましたわ。」

そう言って廊下に叫ぶ。それを聞きながら俺は体を起こす。

「っ!」

全身から鋭い痛みが走る。

「キリア、まだ寝てないとだめですよ。あなたの体はもう、ボロボロだったんです。生きていただけでも奇跡と、お医者様も言っておりました。」

そう言われる心あたりももちろんあった。そこに、サーマル様が部屋に入ってきた。誰よりも落ち着いた面持ちをしながら

「さて、キリア君。少し話をしようか。」

そう俺に告げる。

「セリア、少し席を外してくれるか?」

聞かれたくないことがあるのだろうセリアには部屋から出て行ってもらった。すると、サーマル様が

「まず、お礼を言おう。また娘を助けてくれてありがとう。」

「いぇ、俺も世話になったので。」

そう言って顔を上げてもらう。しかしサーマル様は、「だけど、」と言って

「君は生粋のバカだ。」

そう言われた、俺ははキョトンとした顔をする。

「無茶をしすぎだ。君の境遇はセリアから聞いたよ。だけど、忘れるな。君にはもうすでに君の死を悲しむ人間が沢山いる。君の命はもう、君だけのものじゃないんだ。だから、大切にしなさい。」

そう言われて、心に刺さるものがあった。そんなことはわかっていたのだ。今はもう、俺の周りには冒険者仲間がいて、サーマル様やオーラル、セリアがいる。わかっていたことだ。

「すみませんでした。」

ただ、言葉を選ばずにそう謝ると、サーマルは

「うん、それでいい。」

サマール様は笑って俺の頭を撫でた。

「キリア君、1週間もリハビリすれば元通りに動けるそうだ。その後はどうする?」

そう聞かれても、心はもう決まっていた。

「冒険者を続けて、今より強くなります。今回で思い知らされた。世界は広い、まだ俺より強い奴はいくらでもいる。だから、全てを凌駕する力が欲しい。」

そう、迷いなく言い切る。そこには一切のこころの揺らぎはなかった。

「そうか、僕としては、セリアのそばにいてあげて欲しいんだけどね。」

そう遠くを見つめながらいう。キリアがさらに続けていう

「1週間後、俺はこの屋敷から姿を消します。セリアにバレると面倒なので、セリアにも探させないでください。お願いします。」

「あぁ、わかった。それが君の選択なんだね。」

そうサーマルは納得したようだった。



         1週間後

「さて、行くか!」

そう言ってまだ太陽が登っていない暗い時間帯からキリアは窓から飛び出し屋敷を後にする。セリアには黙ってだ。

(あいつに、バレたら絶対止めてくるからな。それだけはごめんだ。)

そう思いながら屋敷を後にするのだった。



         [セリアside]

廊下を強く早く歩く音が聞こえてくる。そして、執務室のとびらが勢いよく開く

「お父様!キリアはどこにいきました!?」

そう大きい声でサーマルに尋ねる。

「出て行ったよ。元々あの子はここにいていい器じゃなかったんだ。」

そう言いながら遠い空を見つめるサーマル、

「お父様、もう私はキリアにあんなに苦しいおもいをさせたくありません!だから居場所を教えてください!」

そう父親との距離を詰めながら怒鳴り散らす。するとサーマルが急に怒鳴り返した。

「セリア!君もわかっているだろう。あの子がそんなことを望んでいないということを、それは君のわがままでしかないんだよ。」

そう言われたセリアは核心をつかれたような気がして、胸が痛んだ。

(そうか、私はただキリアにそばにいて欲しかっただけだっんだ。あぁ、少し気づくのが遅すぎましたのかな。)

そう思いながら、

「すいませんでした。お父様、しつれいします。」

そう言って部屋を後にして、自室へと戻る。

(でも、もう一度会いたい。もう一度会って今度は、ちゃんとキリアの隣に立てるように、)

そう思いながら、術式を使う。そして、セリアは急に笑い出した。

「フフッ、キリア、そこに来るんですね。わかりました。そこで、もう一度会いましょう。今度はもう逃しませんから。」

そう言いながら、駆け足で執務室へとまた向かうのであった。

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