第16話 静かなSOS
あのデートからさらに2週間、明日は皇城でのパーティが控えている。そして、俺がこの屋敷を去る日でもある。
「それじゃ、セリア様、サーマル様、今までありがとうございました。セリア様、明日は頑張ってください。」
「うん!全力で頑張ります。」
そう泣きそうになりながらも俺を見送ってくれた。そして、とりあえずギルドのところへと向かった。ギルドに入るや否やすぐにオーラルに呼び出される。
「今日で、お役目ごめんか?キリア」
「あぁ、これで冒険者に専念できる。」
少し寂しさを覚えつつもその気持ちを拭い切って答える。
「で?オーラル、呼び出したってことは、また、面倒ごとを俺に頼もうってことだろ。」
「はは!鋭いな。キリア、実はな国から緊急クエストが出てるんだ。お前がいたヘルがあるだろ。どうやら、あそこでスタンピードのような魔力感知があったらしい。だから、騎士団と合同でお前が冒険者を連れて行ってきてほしいんだ。」
そんな厄介事を押し付けられた。
「いつ?」
「明日」
「明日!?」
俺は驚いた声を上げる。しかし、すぐに落ち着いて、
「わかったよ。そのかわり今日はここに泊まるからな。」
「おう!それぐらいなら使ってけ。」
そして、次の日
俺は、集合場所である、城壁の門のところに20人程度の冒険者を連れて来ていた。
「いや、キリアさんと一緒に行けるなんて光栄です。」
そんなことを何人が言ってくるが基本無視である。少し時間が経って、門から馬に乗った騎士団どもが来た。
「やぁ、君たちが今日一緒に来てくれる、冒険者達かい?」
そう言ってくるのは、この国の騎士団団長、フェリ=サングリア、赤い腰ぐらいまである髪と、翠眼が特徴的な女性だ。
「あぁ、そうだ。とりあえず早く終わらせたい。ヘルに向かおう。作戦はそれからだ。」
騎士団と共にヘルへと歩く。そして、ヘルの入り口のところへとたどり着いた。
「では、これより作戦を説明する。冒険者はここで溢れ出た魔獣の駆除を頼む。我々、騎士団とキリアくんは最深部へと向かいスタンピードを止めてくる。」
(なんか、俺も奥に連れていかれることになってんだけど、まぁええけど、)
渋々ついていくキリア、そして森の中へと入っていく。キリアはとりあえず自分に向かってくる魔獣を片っ端から打ちのめしていく。すると、団長が、
「やはり君、強いな。その若さでその実力とは恐れ多いよ。」
「そりゃどうも」
そんな愛想の悪い返事をする。そして、最深部付近のところまで来たところで、キリアは異変に気づいた。
「なぁ、団長さん。なんか変じゃないか?俺はスタンピードを見たことないから知らんが、もっと魔獣がいるもんじゃねぇの?後、こいつらの眼がおかしいんだ。普通スタンピードなら森の出口に向かっていくはずだ。なのにこいつらは俺ら目掛けて、突っ込んできてる。こんな、不自然があるか?」
そういうと、考える態度をとりながら団長は、
「たしかに、何か変だな。」
すると、先行していた、部隊から1人の騎士が帰ってきて報告を告げた。
「スタンピードは、起こってなく、あったのは魔力石のみ、これを見間違えたことだと思います。」
「そうか、それはよかった。なら、撤退、」
「違う、」
団長が、安堵の声を漏らしていると、隣からその声が遮られた。そしてキリアは独り言を言い始めた。
「今日は皇城でパーティだ。普通に考えろ。いくらスタンピードだからといって、騎士団長をこっちに連れてくるか?いや、おかしいな。だとすると答えは一つか、」
「おい。キリアくんどうしたんだい。」
すると、キリアがはっきりと告げる
「皇城が危ない!全力で皇城へ騎士団を戻して、何人かを保険でこっちに置いて、俺が先行する!全力でついてきてください。」
「どう言うことだい。キリアくん?」
焦った感じで聞いてくる団長
「はめられたんだよ。俺らは、誘い出されたんだ。まんまとな、多分国の上層部にも裏切りもんがいるぜ!」
そう言って全力できた道を戻るキリア、それを見たフェリは
「我らも彼に続くぞ!第三隊までは私について来い4、5番隊はここに残って引き続き警戒体制をはれ!」
そう言い残して全力で馬を走らせる。それを横目で確認しながら全力で飛ばすキルア
(無事でいてくれよ!セリア!)
一方、皇城
「キャァァァー」
そんな悲鳴がどこからでも聞こえてくる。その状況でセリアは逃げ遅れてしまった。すると、後ろから、
「お前が、伯爵家の姫さんか?」
フードを被った筋肉質の男がセリアに近づいてきながら尋ねる。しかし、セリアは強気に
「だったら、どうしますか?」
その瞬間右肩を何かで貫かれた。セリアの眼を持ってしても避けれなかった。
「キャァァァー」
痛みに耐えられずにそんな声を漏らすセリア、
「おい、嬢ちゃん。言葉使いには気をつけろよ。俺はお前をいつでも殺せる。」
そう言いながらさらに近づいてくる男。
「いや、いや、」
後退りをするセリアに対して男はこう言った。
「おい、お前が伯爵家のとこのやつだってことはなんとなくわかったからもういいよ。だから、教えろよお前の呪いを解いたやつを、そしたら見逃してやるよ。」
誰かは分かり切っているセリアは一瞬キリアの名前を出そうとするがすぐに抑え込む。
「言いません。」
そういうと男が急に距離を詰めて
「なら、しね。」
拳を全力で振り下ろす。
(もう一度キリアに会いたかったな、)
そう思いながら眼を閉じた。
キィィィン
そんな甲高い音がダンスホールに響き渡った。すると、
「遅れて悪かった。あの時君が言ったようにちゃんと守りにきたよ。」
そう言って、セリアの王子様が割って入ったのだった。
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