第13話 ラブコメスイッチオン!
「王子様?」
すごい嫌な感じの単語が聞こえてきたので反応する。
「いえ、セリア様、私は王子様ではありません。冒険者のキリアと申します。」
「キリア様?」
「いえ、キリアで結構です。」
「あなたが助けてくれたの?」
「はい、まぁそういうことになりますね。」
そういうと、セリア様に笑顔の花が咲いた。
「ありがとうございます!もう、目を覚ますことはできないと思ってました。」
すると、キリアは優しい笑顔で
「そうですか。それはよかったです。」
そして少しキリアの顔が曇る。
「当主様、少し二人でお話しできるでしょうか。」
当主様と二人でセリアの元を離れ執務室へと向かう。
「それで、当主様、」
「当主様はやめてくれ。むず痒い、サーマルと呼んでくれ。」
「それでは、サーマル様呪いをかけたやつに心当たりはありませんか?例えば一年前に死んだやつとか、」
「死んだやつ?、あ!そういえば一年前にちょうど悪事を働いていた男爵を追放して、そいつが自殺したな。」
「なら、多分そいつです。あの悪意の大きさ的に間違いありません。ですが、多分ですが、何かが一枚噛んでます。」
「というと?」
キリアが考えた顔をしながら
「はい、まず直接人の悪意を呪いに変えるのは不可能です。術式が絡んでいると考えるのが良さそうです。しかし、男爵家の人間がそっち系の術式を持っていたら流石に調査対象に入ってるはずです。」
サーマル様が険しい表情になりながら、
「そういうことか、どうりで術者がわからなかったわけだ。」
そう言いながら遠い空を見た後に、
「キリアくん、まずお礼を言おう。ありがとう」
「いえ、そんなお金だけちゃんと払ってくれたら大丈夫ですよ。」
と、そんなゴミみたいな発言をする。
「はは、君は優しいな。その君に少し願い事があるんだけどいいかね?」
「はい?なんですか?」
なんだろうと尋ね返すキリア
「一ヶ月間、セリアのリハビリを手伝ってやってくれないか。」
「え、何故ですか?」
「実はな、一ヶ月後のこの皇国で皇子の誕生日のパッティーがあるんだが、娘が眠っていたことを国にも話してなくてね。君が近くにいてくれたら色々と助かるんだ。頼む。もちろんこの屋敷の部屋を貸すし、食事もこちらが用意する。頼む、この通りだ。」
そう言って頭を下げてきた。
(悪い話じゃないな。金は貯めておきたいし、何より呪いをかけたやつが襲ってこないとは考えにくい。まぁ特にすることもないし別にいいか。)
「顔を上げてください。受けますその話。」
すると、サーマル様が嬉しそうな顔をしながら
「そうか、受けてくれるか。」
そう安堵した声を漏らした。
「そしたら、少し娘と話をしてくれないか?」
「別に構いませんが」
そう言われてセリア様の部屋に向かう。
「どうぞ、ごゆっくり。」
そう言われてメイドにセリア様と二人きりにされてしまった。
「体調はどうですか?セリア様。」
そういうとセリア様は頬を膨らませて
「普通に喋ってください!少しぎこちないです。それに、セリア様もやめてください!セリアって呼んでください。」
(まぁここで拒否する権利は俺にはないわな。)
「わかったよ。これでいいか?セリア」
それを聞くとセリアは顔を背けた。この時少し顔が赤かったような気がした。まぁ気のせいだろ。
「セリア、これから一ヶ月間君のリハビリを手伝わせてもらう。この屋敷に住んでだ。だから何か違和感があれば言ってってほしい。」
それを聞くと驚いた顔でセリアが
「ほん、とうですか?キリアはここに一ヶ月いるんですね。じゃ、一つわがままを言っていいですか?」
「いいぜ。俺のいける範囲だったらな。」
「なら、ここから東に行くと小さな丘があるんです。そこに咲いてる、マリーゴールドが見たいんです。でも、この足じゃまだ歩けません。てことで連れて行ってください。」
いやいやそうにするキリアだが、
「はいはい、わかりましたよ。じゃ、行きますよ。」
そう言ってセリアをひょいとお姫様抱っこをする。
「んっ!!!!」
驚きながら、顔を真っ赤にするセリア
「いやかもだけど、少し我慢してくれよ。」
「いやじゃ、ないです。」
何か、セリアが言った気がしたが俺にはなんて言っているか聞こえなかった。そんなことをしながら、窓から外へと飛び出す。
「おちっ!」
「無いよ。」
そう言いながら空へと浮くキリアたち、まるで、見たこともないかのように俺に聞いてくる。
「なんで、浮いてるんですか?」
「あぁーこれか?これは"黒境"って技だな。空気のところに魔力の境目を作ってそれを地面にして浮いてるんだ。」
「技?術式じゃないんですか?」
そう不思議そうに聞く、
「俺は、術式を持ってないからな。」
すると、セリアが居所が悪そうに
「すいません!無気質なことを聞いてしまって、」
「全然いいよー。もう、どうでもいいし。じゃ飛ばすぜ。」
そう言って空を飛んでいくキリア達だった。
数十分後
「綺麗なマリーゴールドだな。」
初めてそれを見て思った言葉がそれだった。そこにあったのはマリーゴールドが一面に咲く丘だった。
「そうでしょ!私この場所が大好きなんです。」
そう言ってマリーゴールドの中で座りながらはしゃぐセリアはまるで、妖精が花に魔法をかけにきたかのような光景だった。
「そうか。」
そう返すと、
「ねぇ、キリアこっちにきてください!」
そう言われたので仕方なく、セリアの場所へといく。
「しゃがんでください。」
しゃがむとセリアが俺の頭へと手を伸ばし、マリーゴールドをつけてきた。
「うん!やっぱり似合ってます。」
そう言って微笑むセリアをみて、俺は顔を背ける。
(今の、笑顔は反則だろ!)
そう思いながら、セリアに背中を見せ、早くなった鼓動を元へと戻す。その最中にセリアに話しかけられた。
「 ね」
強い風が吹いて俺は上手く聞き取れなかった。
「ん?なんて言った?」
「いえ、なんでもありません。それじゃ帰りましょうか。」
そう言って俺に、抱っこを要求してくるセリアの顔が少し曇っていた気がした。
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