第8話 新たな出発点
「あれから1年か、もうこの森で俺に届くやつはいないか。」
そう言いながら天を眺める。
(色々、きつかったな。飯はまずいし、森の匂いはきついし、夜になったら静かすぎて寂しいし。 まぁ、それも今日で終わりか。)
「さて、行くか!」
(目指すはここからさらに北にあるフリオーディン皇国)
そう思いながら、大量に積み重なった魔獣の死骸を後にするのだった。
そこから、襲ってくる魔物を全て返り討ちにしながら全速力で走り抜けること約30分。
「へぇー、ここがフリオーディン皇国か!」
そう言いながら城壁の周りを歩いて入り口の門を探していると、
「そこの、ガキ止まれ!」
そう呼び止められた。呼び止めてきたのは若い感じの多分衛兵さんだろう。
「なんですか?」
少し睨みを効かしながら返すと、
「いや、ここでは見ない顔だと思ってな。冒険者のライセンスなどの身分証明書は持っているか?」
(なるほどね、俺を犯罪者だと疑っているのか。まぁフードをかぶっていたらそう思われるのもしょうがないか。)
そう思いながらフードを外す。
「すいません。田舎のところから出てきて、ライセンスも何も持っていないんです。」
それを聞くと衛兵は、俺から悪意を感じないと思ったのか、
「ついてこい。通行書を渡してやる。」
そう言って、通行書を与えてくれ。門まで案内してくれた。
「お前、冒険者かなんかになって身分証明書かなんかもっとけよ。じゃないと怪しまれるぞ。」
(なんやこいつ、案外いいやつなんか。なんか嘘ついてすみません。まぁ襲ってくるようやったら返り討ちにしていたけど。)
「はい、わかりました。じゃ、冒険者にでもなってみます。」
「おう、頑張れよ。」
そう言いながら手を振ってくれる衛兵さんを後にし、街並みを見る。
(気候的には少し寒いが、春だったらこんなもんか、それよりも思っているより発展しているな。エルカディアと一緒で中世ヨーロッパみたいだ。)
「冒険者か、強くなるんだったらベストかな。金もないし、いっちょなってみるか!」
そんなことを一人で歩きながら呟くのだった。
[エルカディア王国side]
キリアがフリオーディン皇国へと入ったと同刻、
仕事をしているラインハルトのところに1人の部下が駆け足で入ってきた。この部下はラインハルトがヘルからでる魔獣の数が減っていると言う噂を聞き、ヘルに送り込んだ優秀な部下である。
その部下が口を開く、
「ヘルの最深部、近くに驚くほど高く積み上がった、魔獣の山がありました。しかも、その中には、ランクAランクと推定される魔物が数十匹混ざっておりました。」
「バカな!ありえない!ヘルはAランクまでの魔物しか出ないはず。まさか、Sランクの魔物でも出たというのか?!」
そう机を叩きながら立ち上がり驚きを露わにする。
「えぇ、驚くのも無理はありません。私たちも実物を見たとしてもこの目を疑ったのですから。」
「そうか、報告ご苦労、もう下がっていい。」
そう聞こえたかもよくわからない声でそう言った。そして、部下が下がったのを見て、ラインハルトは下に俯きながら涙をこぼし始めた。
「すまない。キリア、そんな場所に息子であるお前を、すまない。許してくれとは言わないだからどうか、天国から家族を見守っていてくれ。」
そう言いながらラインハルトは1時間ほど泣き続けた。この時のラインハルトはまだ知らない。それを全て倒したのはまごうことなき自分の息子であるということを。
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