吸血鬼の懺悔
南篠豊
吸血鬼の懺悔
初めてだった。初めてだった。
彼女は怪物のわたしを愛してくれた。太陽に嫌われたわたしの太陽になってくれた。
愛おしかった。愛おしかった。
百年の孤独を埋めてくれる彼女の笑顔が。奇跡のようなこのぬくもりが。
だからわたしは失わぬように、わたしの永遠を彼女に分けた。愚かにも。
血の支配は強力だった。眷属となった彼女はわたしの意のままになった。わたしの意のままにしか笑わなくなった。
自由な魂こそが彼女を太陽たらしめていたのだと、わたしは失って初めて理解した。
許してほしい。許してほしい。
絶望に泣き崩れるわたしのあさはかな意をくんで、彼女はわたしのほほに触れた。かつてと比べれば凍えた蝋のような笑みを浮かべて。
すまなかった。すまなかった。
無意味な謝罪。取り返しのつかない過ち。せめて最期に彼女の手を取り、わたしは光に向かって永遠を手放した。
吸血鬼の懺悔 南篠豊 @suika-kita
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