第2話 人生で出会う
初めのほうで行ったと思うが中学2年生の頃から外には出ていない。部家着以外の服に着替えるのはなんだか懐かしい。
久しぶりに見た財布。久しぶりに持った鞄。久しぶりに履いた靴。
外に出るのも嫌な気分ではないな。
さぁドアを開けよう。
ドアノブに手をかけ、ゆっくりと押す。
普段いる薄暗い部屋とは正反対のまぶしい日光が隙間から差し込む。
ドアを開ききったとき見えたのは、光を乱反射している真っ白な地面だった。
「さっむ!!!!!」
これまた久しぶりに声を出した気がする。たった3文字なのに喉が痛くなった気がする。
どうやら外は冬のようだ。昼夜逆転とか、そもそも寝なかったりとかして、体の時計ごと崩れてしまっていたようだ。
家はそれなりにきれいでエアコンも使い放題。暑さも寒さもエアコンを常に自動設定にしているから感じない。それのせいで季節すら感じさせてくれやしなかった。
僕はてっきり春かと思っていたんだがな。まったく見当違いだぜ。
真冬に半袖、短パンとか普通におかしな奴じゃないか。
ん?女子高生か。制服着ているし今日は平日か。同じ年なのだろうか。決して気になっているわけではない。気分が下がっているのだ。まぶしかった日差しもなんとも思わなくなってしまった。
「こんな雪が積もるほどの時期に半袖、半ズボンの人がいる。絡まれても嫌だし、別の道通ろうかな。」
絡む?そんなのこっちから願い下げだ。ま、こんな格好じゃ仕方ないか。
あぁ、出だしから最悪だ。ただでさえ人が嫌いなのに、それが「女」なんてな。
一見男女差別に聞こえるかもしれないが僕には少しトラウマがあってね。思い出したくもないあの日をこの数秒ですべて思い出してしまったではないか。本当に最悪だ。
「やっぱり外は嫌いだ。」
2番目に発した言葉はこれだ。もともとマイナス思考が多めな僕だったがこれは酷く考えしすぎたかもしれない。外に出る気が一瞬で失せてしまった。
ただ、家に籠っていたってすることがない。テレビだってほとんど外に出ないんだから見たって意味がない。こんな朝っぱらからアニメもやってるわけがない。
さっさと服を着替えてネカフェに行こう。
さぁ、今度こそ長袖、長ズボン、厚い上着、大きめのマスク、サングラスに帽子。完璧すぎるこの服装。なに?今からコソ泥でもしに行くのかって?
するわけないだろう。忘れたのか?ネカフェに行くんだよ、ネカフェに。
まぁこんな長ったらしい文を読んでたら忘れるよな。
いいよなそうやってすぐ物事を忘れられるって。
忘れられない過去を持っている人間は時には強くなると聞いたが、そんなことはあり得ない。忘れられない過去があればあるほど弱くなる。忘れてはいけない、彼女も友達もすべて切り捨てたあの日をな。
なんだかずいぶん長かったがやっとネカフェに到着だ。
「いらっしゃいませー」
かわいい。最初に思ったことだ。高校生だろうか。朝あった女とは違い、こんなぼさぼさ頭の客を明るく迎えてくれたのだ。しかし、僕はもう人と目を合わせる資格はない。彼女の顔を直視することはできなかった。
しかしこんな朝なのにバイトか?よくわからないがこいつも大変なんだな。
......
こいつ「も」ね...。間違えてしまった。年がら年中引きこもっている僕より、全然えらいじゃないか。僕なんかと一緒にしてしまって申し訳ない。
彼女の近くにいるだけで泣きそうになる。
早く部屋を選んでしまおう。
ボロボロな外見だが中は案外きれいで漫画も品ぞろえがいい。と、レビューに書いてあったからいつか行ってみたいと思っていたが....
外はボロボロ、中もボロボロじゃないか。漫画もどれも古いものばかり。肝心なパソコンもろくなもんじゃない。誇りまみれだし、これ動くのか?というレベルだ。
まあ、ここ以外遠くて行く気が1ミリも出ないから我慢するか...
そもそも変な広告押した自分のせいなんだからな。
そう、全部自分のせい
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