寿命を延ばしてみた(笑)

@komukomu77

第1話 人生を延ばす

 今は何時だろうか。しばらく外に出たことはないし、出る気もない。

 唯一の友達はこのネットの中。何かあればネットでつぶやき、何かあれば現実とは逆方向の世界を冒険する。

 そんな引きこもり生活している中、時折頭に浮かぶことがある。

「こんな生活やめなければいけない」と。

 まぁ、そんな無理なことを考える暇があるならネトゲに費やしたほうが何千倍もいいと思っている。

 そういえば僕は何歳だっただろうか。ついこないだまでは中学2年生だった気がする。ただ、今は5年後か...。時が経つのはあっという間だな。

 こんなことを考えたせいで嫌なことを思い出してしまった。今思えばそんなものすべてがしょうもなかった気もするが。


 いつものようにサーフィンするか。

 見よ、この素晴らしい手さばきを。我ながらすごい特技だと思っている。わずか4秒でツエッターを開くことができるのだ。長年積み上げてきたかいがあるぜ。

 すまない、今の茶番は忘れてくれ。いつもの癖だ。こうでもしないと脳が狂ってしまう。そもそも学校にも行かず家で引きこもっている社会不適合者の脳みそが回転しているなんて思わないがな。


 なんだこの広告。見たことないな。新しい広告だろうか、またどうせ詐欺広告とかその辺だろう。

「100年じゃ物足りないとは思わなか。あなたはボタンをクリックすると人生をその10倍にします。ただし死ぬことができなくなります。」

 胡散臭い広告だな。妙に翻訳臭いし、一文字抜けてるぞ。まぁ、暇だしてきとうにボタン押してみるか。

「成功しました。」

 やっぱり何にもならないじゃないか。寿命が長くなってるかなんてわかるはずもないのは確かだが、どうせ詐欺広告だろう。しかし、これがもし本当に寿命を延ばしたのであるならば、僕は好きなように時間を使える。といっても顔も見えない相手と話をするだけなんだがな。

 ま、広告も成功したといっていることだし、もう100年くらいは食って寝るの生活をするとしよう。

 パソコンに青い画面が表示された。クソッ。さっきの詐欺広告のせいだな。あんなゴミ広告クリックするんじゃなかった。ウイルスでも入れてやがったのか?

 小学校を含め7年ほど、義務教育もろくに終えることができなかった僕の頭脳がウイルス退治なんかできるはずもない。

「ネカフェにでも行くか。」


 金自体は腐るほどある。親父はとある会社の社長なのだ。ならネカフェなんか行かずに新しいパソコンと買ってもらえばいいと思うかもしれないが。ここ数年は口を聞いてくれないのだ。こっちから拒絶しているのかもしれないがな。なんせ声の出し方も忘れたぐらいだ。話しかけてすらない。

 ただ、親父が嫌いなわけではない。僕の部屋の前に飯を毎日おいてくれるのだ。そんな優しい親父を嫌いなわけがない。

 母親?そんなもんはいない。あいつはこんな素晴らしい夫を置いてほかの男と不倫しやがった。そのうえ妊娠しやがったのだ。そのくせ自分は悪くないだのなんだの。  

 親父はそいつを切り捨てた。当たり前だと思う。僕も親父の立場だったら、同じことをしてたと思う。ただしそのころの僕は中学2年生だ。僕にとっては大事な母を失くしたのだ。あまりのショックで学校でも死んだ目をしていた。

 ああ、話が長くなってしまった。昔のことは忘れよう。過ぎ去ったことを考えても何も変わりもしない。

 人生は一度きりというが、それは「輪廻転生はない」という意味だけではない。「取り返しがつかない」という意味でもあると僕は思っている。

 どうでもいい話はさておき、ネカフェに行く準備をしようか。


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