罰ゲーム
心は父子家庭で、父親は優しくてニコニコしていて、いつも忙しそうだった。
ずっとキョロキョロと目や顔を動かし、行動や言動について指摘されると驚いたり、慌ててパニックになったり、不思議な子。
今日も教室で、沢城達のグループにちょっかいをかけられている。
「相手チームにパスしちゃってどうしたの?」
ニヤニヤ、クスクス。
「え、あ、ごめんな、さい」
俯いて、困った表情。
「指示してたのに、全然聞いてくんないから寂しかったじゃーん」
「あ……あ、その、その」
面白がっているんだろう、心がああやってキョロキョロして焦っているのが可笑しくてつい弄ってしまう。
分からなくもない、けどあそこまで言い寄る必要もないような気がする。
「いっぱいいっぱいだったんだよね? 運動系苦手そうだし、仕方ないじゃん」
爽やかにフォローしているのは沢城だ。
顔が良い男は女に対して特性があるのか?
「あ……う」
ほのかに頬を赤らめて、心はずっと俯く。
またその反応を面白がって、クスクス笑う。
俺は、地味組。
誰の的にもならず、大人しい友人達とゲームの話やテストの話、彼女持ちを妬んでいればいい。
沢城達に目をつけられるような行為はしたくない。
だから、他人のフリをしている。
心も馬鹿じゃない。
だから、他人のフリをしている。
気になるのは、沢城は一体何がしたいのか?
グループでちょっかいかけては笑い者にして、後からフォローして気があるように優しくする。
最初は単に陽キャの優しい奴かな、と思っていた。
心は素直で単純だ。
ああやって優しくされたら、嬉しい。
放課後、心は掃除当番で中庭にいる。
俺は教室の掃除当番。
終わり次第帰りなんだけど、毎日掃除しているから大して時間はかからない。
中庭の方がかかるだろう、学校の外でゆっくり待っていようかな……。
掃除を終えた沢城が他の男子2人と机を囲んだ。
「もう1人は欲しくない?」
「まぁね、3人だとすぐ終わるし」
トランプを取り出して突然ゲーム。
またド定番の物を……。
「あっ、ちょっとちょっと春斗君、一緒にやんない?」
ほとんど喋ったことないのに、名前で呼ばれてしまう。
「え、あー」
周りにいつも一緒にいる友人達がいない。
こういう時に限って掃除当番がバラバラなのは最悪だ。
「遠慮しないで、ほらほら座って」
流されるまま座らされる。
強引過ぎるだろ、これが陽キャの力か。
「ま、簡単にババ抜きとかどう? そんで罰ゲームあり」
「ビリは何すんの?」
1人が悪戯に笑う。
「負けたら告白」
どこか楽しそうな「えぇー」に、俺は苦笑い。
やばい、とんでもないのに巻き込まれている……。
誰かに告白とか、そんなの嫌だ。
どうにかして逃げないと……。
「そんで、告白相手は?」
沢城はニヤニヤと訊く。
「もちろん、あのキョロキョロしてるチビ女。面白そうじゃん」
え? はぁ?
一瞬にして逃げ道を塞がれてしまった……――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。