ぎゅぅっと
今着用しているむーくんコスはジーンズのように硬い素材ではない。
内側から持ち上げられれば、布は容易くその形を変えてしまう。
いくらボクのが小さめであっても、大きくさせてしまったら一目瞭然だ。
特に被写体として注目されている今は、少し反応させただけでもバレかねない。
だというのに、ボクの性器はその頭を徐々に持ち上げ始めてしまっている。
「っ……っ!」
動揺すら気取られてはいけない状況。
何かあったのかと思われれば、余計に視線を注がれる。
そんな状況分析も、興奮による生理現象の前ではあんまりにも無力だ。
危機感、焦燥感、羞恥心、背徳感。
どれも心臓の鼓動を早くさせる作用を持つ感情ばかりで、余計に勃起の速度を上げてしまう。
早く何か行動を起こさないと、ただ無様な姿を晒すだけだ。
「きゅっ……ぅっ……!」
「?」
口を開いたはいいものの、結局何も言い出せなかったボクに周囲の人たちが怪訝な目を向ける。
休憩を言い出そうとしたのだけれども、途中で間に合わないことに気づいた。
休憩を宣言してもすぐに人の目が離れてくれるわけではないから。
股間を押さえたり、腰をひいたりしたらそれこそバレバレだ。
逃げ出そうにもボクの体はひーくんに抱かれているし、何よりボクが逃げればひーくんの勃起が晒される。
だからもう、ボクにはこれしか打つ手が無かった。
「っ~~!」
「え?」
またもや上がるノリノリな黄色い歓声と、ひーくんの驚いた声。
それらを、ボクはひーくんのお腹に顔を埋めながら聞いていた。
「ごめん、ひーくん……ボクも……」
「あ~……そっか~……それなら仕方ないね~……」
むーらんがもーもんに抱きつくのはわかるけど、もーもんは抱き返したりしないだとか。
もーもんだったら邪険に払い除けるか、もしくは満更でもなさそうに棒立ちするんじゃないかとか。
でもショタもーもんだったら逆にアリ寄りのアリアリだとか。
そんな外野の議論が聞こえるけれど、それに耳を傾ける余裕はない。
むしろ、状況はさっきよりも悪化しているのだから。
「このまま、自然におさまるまで待ってよっか」
「う、うん……」
ひーくんの提案に頷いてみせたものの、このままではイベントが終わるまでずっと抱き合うことになるだろう。
ボクのお腹には、硬く大きくなったひーくんの性器が触れていて――
ボクの性器も、ひーくんの体に触れていて――
それを周囲の人たちに知られないように、互いに強く抱き合っていて――
――こんな状況で、ボクの体が落ち着きを取り戻せるはずなんてないんだから。
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