※何も気にすることなく、ただ気持ちよく

「んっ……あっ、ふぅっ……」


 粘ついた水音。

 悶える吐息。


 全部ボクの口から聴こえる音。

 ひーくんの口によって鳴かされた音。


 聴いているだけでも恥ずかしい。

 恥ずかしいと自覚しているのに、それでも止められないのが尚のこと。


「んっ、あっ……んくっ」


 口の中に溜まった液体を喉の奥へと嚥下する。

 その液体が何かと考えると余計に恥ずかしいから、ただ無心に。

 飲み込まないと呼吸が苦しいから仕方ない、ただそれだけなのだと。


「んっ、ちゅっ……んふふ~、ぬいくん気持ちよさそうだねえ~?」

「はぁっ……はぁっ……そんなこと、ないよ……」

「え~、ほんとう~?」

「んっ♡」


 一際恥ずかしい声。

 でも、そんなところを触られたら仕方ない。


「ふふ~♪ お眠なのにおっきできてえらいえら~い♪」

「あっ♡ ひっ、ひーくんっ、やっ、やめてっ♡」


 とん、とん、とピアノでも弾くかのように、ボクの下腹部でひーくんの指が跳ねる。


 ひーくんの指が接地する度にボクの体はビクビクと震えてしまって、喉からは勝手に媚びるような声が出てしまう。


「こんなに大きくなって悦んでるのに?」

「そっ、それはっ……おっ、お酒のせいだもん……!」

「そっか~♪ それじゃあ、大きくなっちゃうのも仕方ないんだね~♪」

「ひぅっ♡ だっ、だから、やめてってぇっ♡」


 これは正真正銘の仕方のない生理現象だ。

 止めてと言ってもひーくんが止めてくれないのが悪いのだ。


「え~、どうして止めて欲しいの~? ぬいくん、気持ちいいんでしょ?」

「だっ、だって、やりすぎたら明日に――」

「だ~め~で~す♪」

「んむっ――♡」


 再び唇を塞がれ、言葉を封じられた。


「明日のことなんて考えちゃダメだよ? 今だけは、ぬいくんは気持ちいいことだけ考えてればいいんだからね?」

「でもっ――」

「でもは禁止♪」


 そう言って、ひーくんはボクの中で舌をうねらせ始めた。

 どうしても本音を誤魔化してしまう舌を揉み解すように。

 素直な喘ぎ声だけを搾り取るかのように。


「っ! ダメっ!」


 咄嗟に、ボクは両手でひーくんを遮った。


 左手でその唇を。

 右手でその手を。


 流石にそれだけは避けなければならないと、微かに残った理性が判断してくれたから。


「どうしたの?」

「だっ、だってっ……」

「だって?」

「っ……で、出ちゃいそうだったから……」


 実際に出した訳でもないのに、それを口にしただけでも恥ずかしくて、顔から火が出そうだった。


「出していいんだよ?」

「でっ、でもまだ服が――」


 ボクは右手でズボンをずり下げようとした。

 このままでは服を汚してしまうのだから、それは当然の行為だ。


「えっ?」


 でも、遮られた。

 ひーくんの手によって。

 その唇を抑えていたはずの左手までまとめて。


 ボクの両手は頭の上で、ひーくんの利き腕でもない片腕一本に封じられてしまった。


「ひっ、ひーくん?」


 声が震えているのが自分でもわかった。

 ひーくんの思考が、今は明確にわかってしまったから。


「だ~か~ら~……出していいんだよ、ぬいくん♡」

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