第154話
光が消えて、由香里が目を開けると、宮殿は消えていた。
灰色のもやは晴れ、灰色の厚い雲におおわれた
アイリスの青い杖の下、灰色の石の地面の上に、真っ白な本が横たわっていた。本はふわりと
「んー、終わったわ」
アイリスが伸びをする。
「ありがとう、由香里。あのまま力づくで本にしてたら、呪いの本になってたかもしれないわ。でも、彼女たちは
「……そうなんだ。私が読むことで、彼女たちの
「そうなるさ」
アズキは後ろから由香里を抱きしめた。
「モルモフは女神を受け入れる」
トクン。
二人の
由香里の
「……え?」
「由香里、僕を石から出してくれた光は、君だね。ありがとう」
チャシュがほほ
「え、あ、どういたしまして。自分でもよくわからないけど。うん。チャシュが戻ってきてよかった」
由香里は
「
チャシュがそう言って空を見上げた。
灰色の雲のすきまから
「んー、戻るわよ。由香里、館に戻ってその腕の手当をしないとね」
「由香里、お姫様抱っこしてやるよ。それともおんぶがいいか?」
「どっちもヤダ。自分で歩けるから。アズキがウサギの姿に戻ったら、抱っこしてあげるよ」
「お、おう。それじゃあ」
「アズキ、君は歩け。甘えるのは今じゃないよ」
「るっせーな、チャシュ。わかってるよ。由香里、ほら。手つなぐぞ。チャシュ、てめー、なにニヤニヤしてんだよ!」
「んー、由香里。宮殿もなくなっちゃったことだし、傷が治ったら一緒にモルモフを旅しない?
「へー、そうなんだ。うん、いいね」
にぎやかな帰り道。由香里の歩いた後から、
前方に古い洋館が見えてきた。本の館だ。
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