第140話
部屋に戻ると空気が変わり、木の匂いに包まれた。由香里は、ふっ、と息をついた。
由香里の腕の中で、アズキはじっと体を
ナルシィは……
ビーは……踊る歌う楽器を鳴らす……と言ってたな。うん。まともだ。……何か楽器でもあればなぁ。由香里は部屋を見回した。何もない。
「あるお。あたちが楽器になるお」
声とともに
「……えっ⁉」
黒豹がギターに
由香里はギターを手に取ると、
ポロン、と鳴った。おっ、いい音。ポロン、ポロン、ポロポロと、いつしか由香里は全てを忘れ、
アイリスはひとしきり泣くと、立ち上がった。
「ありがとう、由香里。ん、私はもう大丈夫よ。館に戻って、少し
アイリスはヒラヒラ手を振って、ドアの向こうに消えた。
「いい音色だったお。またお。いつでも奏でておん」
ギターは黒い子豹に戻ると、喉をゴロゴロ鳴らしてスゥーと消えた。
「……アズキ、風呂に入ろう」
由香里はウサギを抱き上げると、あたたかな湯に
とぷん。腕の中のウサギが人に変わる。人の姿になったアズキは、由香里に抱きついた。しがみつくように抱きしめた。
「……チャシュが、女神殺しに手を
由香里の手が、そっとアズキの背中をさする。アズキの肩が震えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます