第139話
石の机、その上に実物大の猫の石像。それがチャシュだと、すぐには理解できなかった。
「チャシュ? どこにいる? 返事しろ! チャーシュ!」
ひっそりと静まり返った館の中に、アズキの声が
「チャシュならそこよ」
色を失ったアイリスが、石の猫を
「え……、でも、これは石だし、チャシュなわけないでしょ? だって、さっきまでチャシュいたし、私さっきチャシュと話したし
由香里は猫の像に手を
「これが、チャシュなわけねーだろ!」
ウサギがアイリスを
「チャシュよ。チャシュは石になったのよ」
アイリスの声が
「私が今までどれだけ石になった者を見てきたと思ってるの? 石になって……たくさん見てきたんだから」
砂になりサラサラと死んでいった者たちを。アイリスはその言葉をのみこんだ。
机の上に静かに座る石の猫。その灰色の目には何も
「ふざけんな! チャシュ、てめー! 石にならないって言ってたじゃねーか! 何で石になってんだよ⁉ ざけんな!」
ウサギがダンダン足を
「アイリス……部屋に戻ろう」
由香里はウサギを抱き上げると、アイリスの手を引いて館を出た。机の上に石の猫、石になったチャシュを残して、ドアが静かに閉じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます