第133話

「アズキ、アズキの名前はアルキスで、女神を殺したの?」

 アズキはうつむいたままうなずいた。

「……そっか」

 アズキに抱きかかえられた猫と目が合った。

「由香里は落ち着いているね。もっとさわぐかと思ったよ」

何時如何いついかなる時も冷静沈着れいせいちんちゃく。ナルシィの教えだから。驚いたけどね。アズキとチャシュの事は気づかなかった。考えればわかりそうなのにね。考える前にぃ一目ひとめでぇ見抜みぬくんだぉ、ってビーに教わったのになぁ」

 由香里はため息をついた。

「そんなあっさり見破みやぶられたら、僕の方がショックだよ」

 チャシュがほほ笑んだ。

「……血の女神は、死んだ女神の集合体で、そのかくがヘザーなんだと思う。ヘザーはどんな人?」

「ヘザーかい。ツガイモの玉を食い、血を飲むような女だよ。人をしたがわせあやつるために魔術を学び、モルモフを支配しようとした」

「……そんなの食べておいしいの?」

 由香里ドン引き。

「……そんなの僕に聞かれれても、わからないよ」

 チャシュは困り顔。

「あ、そうだね。ゴメン。えっと、……アズキは女神が嫌いなの?」

 チャシュが長い尻尾でポンポンと、アズキの腕をたたいた。それにはげまされて、アズキが口を開いた。

「……嫌いだよ。女神もツガイモも、吐き気がするほど嫌だった」

 アズキは暗い声で話しはじめた。

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