第132話
少しだけさっぱりして風呂から部屋に戻ると、アズキとチャシュとアイリスが、ベッドに腰かけ待っていた。窓のない部屋の中にはさわやかな朝の光がさしている。
「ハーイ、由香里。朝スープを飲みながら、まずは話を聞かせて」
アイリスが明るく言った。チャシュはアズキの
「いただきます」
話をしながら飲んだスープは味も香りもしなかった。いつ飲み終わったのかもわからなかった。食事をしながらする話じゃないよなぁ。由香里は重い息を吐いた。
「んー、夢の話はわかったけど、化物が女神のふりして化けてる可能性はないかしら? それに、ナマコムシと女神は別の化け物かもしれないでしょ?」
アイリスの
「ないと思う。宮殿の中には、死んだ女神しかいない。ナマコムシも女神も、同じ
「んー? 血の臭いなんてみんな同じでしょ」
「私のは違う。不死の樹海で
「んー、わかったわ。化け物はなしで。血の女神ね。私はヘザーという女神を知らないわ。私が知っているのは、アズキの本名がアルキスという事だけよ。女神殺しなんて初耳だわ。指示なんて出してない。私は彼女たちを守りたかったのよ」
「……そうなんだ」
「僕はヘザーを知ってるよ。アルキスは僕の親友だよ」
チャシュはアズキの膝の上で座りなおした。
「アイリスの前任者、魔女のキルケは女神殺しの指示を出してたけど、それは魔女の仕事ではないし、キルケの
「……そうなんだ」
チャシュは大きく伸びをした。
「後は二人で話し……アズキ、離してくれないかい」
膝の上からおりようとする猫を、アズキは両手でつかんで離さなかった。
「アイリス、悪いな。こいつ
アイリスは肩をすくめて部屋を出て行った。
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