第130話

 ガバッ!

 由香里はベッドから飛び起きた! ……そこは木造の部屋だった。

 ふ~ぅ、ベッドの上に座り込み安堵あんどの息を吐き出した。心臓がバクバクしている。嫌な汗が流れた。

「由香里」

 ビクッ、として横を向くと、緑色の目があった。栗毛色の髪が乱れて顔にかかっている。上半身裸のアズキ。……安堵できなかった。

「夢を見たのか」

 由香里は自分の体を見た。透けてない。裸じゃない。ちゃんと着てる。薄緑色のTシャツは、やぶれてないし汚れてもなさそうだった。

「由香里……」

 アズキは由香里を抱き寄せ……られなかった。由香里がするりと身をよけた。

「由香里?」

「……アルキス、女神殺し」

 アズキがかたまった。

「血の女神が、ヘザーって名乗なのった」

 アズキはフイっとベッドから立ち上がると、壁に手を当てた。ドアが現れる。

「チャシュを呼んでくる」

 アズキがドアの向こうに消えた。

 由香里はひとりポツンと部屋の中、ベッドに座って壁を見つめた。

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