第125話

「ハーイ!」

 翌日の昼をだいぶ過ぎたころ、元気よくドアが開いてアイリスが、ババーン! と登場。 

「由香里ー! 起きてるー?」

 ベッドから由香里がビックリ体を起こした。ね起きた! あせって着てるか確認する。よかったー。Tシャツちゃんと着てた。はだかでなくてホッとする。

 アイリスはベッドに腰かけ、ウサギを床に放り投げた。

「何しやがんだ⁉ アイリス、てめー、邪魔じゃまするな!」

 床で足をらすウサギを、アイリスは完全スルーした。

「由香里、ゆうべはちゃんと眠れたの? 今朝は? エロウサギに何をされたの?」

「えっ⁉ な何って、えっとー。 その……、ゆ夕べはさわったら押し倒されて、朝風呂入ってさわったらおぼれて、それで昼前にやっと眠った」

 赤くなって小声でゴニョゴニョしどろもどろの由香里。身を乗り出すアイリス。

「んー、さっぱりわからないわ。スープを飲みながら、じっくりくわしく聞かせてちょうだい」

 アイリスはウサギをシッシッと追い払った。

「チャシュ、アズキと風呂に入ってきて」

「何だとー⁉ アイリス、てめーが出てけ。 ここは俺と由香里の、ってチャシュ、てめー、何しやがんだ⁉ 離せー!」

 猫がウサギの首根くびねっこをくわえて風呂場へ引きずって行った。そして男二人で仲良く風呂に入った。

「やりすぎだよ、アズキ。少しはひかえたらどうだい?」

「るっせー。本の中では、発作寸前か毒で死にかけた時しか抱けなかったんだ。俺は気付け薬でも解毒剤でもねーんだよ。久しぶりにイチゃついて何が悪い? しかも由香里から触ってきたんだ。あんな甘じれ拷問うけておさえられるわけねーだろ」

「君がМだとは知らなかったよ。それとも由香里がSなのかい?」

「ちげーよ。そんなわけねーだろ」

「それじゃあどんな拷問を受けたんだい?」

「教えねーよ」

 プイッとそっぽを向くアズキの耳が赤い。アズキがれてる。おもしろい。

「恋する君はかわいいね」

 チャシュが笑い、怒ったアズキと取っ組み合いプロレスごっこ鬼ごっこ。湯の中で転げ回り湯の外で走り回り、暴れまくった。

 とっぷりと日が暮れた頃、風呂場から全身びしょれの猫とウサギが顔を出した。アイリスはあきれ、由香里は笑いながら濡れ猫と濡れウサギをタオルでいた。晩ご飯のスープを飲んで、今日は解散。

「じゃあねー、由香里。また明日ね!」

 アイリスは楽しそうに笑いながらヒラヒラと手を振って、ドアの向こうに消えた。アイリスの肩の上、チャシュが手のかわりに尻尾を振った。

 ウサギがピョンとベッドに飛び乗った瞬間に、人の姿になって由香里を押し倒す。

「悪いな。今夜も寝かせてやれねーわ」

 由香里が息をのむ。アズキの緑色の目が由香里をとらえて離さない。

「アイリスと何の話をしてたんだ?」

 アズキが色気たっぷりに口の片端をニヤリと上げた。

「えっとー、ちょっとだけ。その……、教えてもらった」

「何を?」

「……さわり方」

 由香里の手がアズキをにぎる。アズキはたまらず息を乱し、熱く激しく由香里を抱いた。

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