第7章 赤い記憶

第120話

「え……ミニビィ? 消えちゃった?」

 由香里はからっぽの手を見つめて目をパチクリ。

「ほっとけば、そのうちまた出てくんじゃね? ミニビィかよ。あのしゃべり方、マジで何とかならないのかよ。イライラするぜ」

 ウサギが前足で耳をふさいだ。

「ビー? ハニービーンのことかい? 彼女はどんな?」

 猫がウサギに体をこすりつける。

「ハニービーンをりゃくしてビーだ。喋り方と性格は置いといて、顔と体と声と仕草しぐさと匂いがめっちゃエロかった。俺は本の中でずっとウサギの姿だったんだ」

 欲求不満のエロウサギ。猫はウサギをペロペロめてなぐさめた。

「んー、本になった魂は滅多めったな事では満足なんてしないのよ。それが二冊もなんて……。由香里すごいわ。クレイジーだわ。んー、それじゃあ部屋に戻って、ゆっくり話をきかせてちょうだい」

 歩き出したアイリスの肩の上、チャシュがふわりと飛び乗った。

「私のどこがクレイジー?」

 由香里は首をひねりながら、アズキを抱き上げアイリスの後に続いた。

 アズキは由香里の腕の中、周囲を見回しにおいをいだ。……石化が進んでいる。本の館、この中に今どれぐらいの本が残っているんだ? じわじわと石が足もとまでせまってきたいるようだった。

 アイリスが壁に手を触れるとドアが現れた。ドアをくぐると部屋の中、木の匂いにホッとした。


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