第106話
糸に火がつくのと、由香里がダッシュしたのがほぼ一緒。一瞬だけ、岸に着くのが早かった。糸の上を走る火よりも由香里の逃げ足が、コンマ数秒速かった。
地面に手をつき
「ナルシィはぁ色気抜きでぇ由香りんに向き合い酒抜きでぇ武術と向き合い己と向き合い
「……ハッチ? ……
「瞬間移動だぉ。この本の中ではぁあたしは何でもできるぉ。ハッチはぁナルキッスの親友でぇ兄弟でぇ
「……忠犬ハチ
「じゃなくて由香里、ハッチはツッチーのモデルだよ」
背中のリュックからウサギがピョンと出てきた。
「えっ⁉ そうなの? ……そ、そうなんだ」
「じゃあねぇ次はねぇ
「おいおい、マジで言ってんのか? 目隠しして転がって糸の上って、ビー、おまえ
「ウサアズキはぁ白ウサギになりたいぉ?
ビーがキャッキャッと笑う。
「
ビーは逃げるウサギを
「ではぁさっそくぅ渡ってみるんだおん」
サラサラのプラチナブロンドにヘーゼルの瞳、かわいらしい天使のほほえみ。
「はあぁ」
もうわけわからん。由香里は
……ナマコムシの糸は可燃性だろうか?
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