第94話

 そのままうとうとまどろんで、いつの間にか眠っていたらしい。心地良い眠りからゆっくり目覚めた。由香里はぼんやり目を開けた。

 木目の天井、ではなくて、人の顔が目の前にあった……。アズキのドアップ。由香里の目が丸くなる。

「……あずき? 私、発作起こした?」

「起こしてねーよ。発作=人の俺、になってんのかよ」

 由香里はうなずくかわりにまばたきした。

「今何時? どういう状況? アイリスとチャシュに本の話をしていたはずだけど?」

「話しているうちに由香里は寝ちゃったんだよ。もうすぐ夜が明ける。チャシュたちが昼過ぎに来るまで、ベッドの中でイチャイチャしようぜ」

 逃げようとする由香里を、アズキはやんわり押さえつけた。

「由香里、大好きだ。俺は由香里とイチャイチャ愛し合いたいんだよ。由香里にも気持ち良くなってほしいんだ。俺を感じてほしいんだ」

「えっとー、それって今じゃなくてもよくない? アズキ、服着て。ウサギに戻って。今は寝る時間だから。睡眠すいみんは大事だから。今は眠ろう、ね」

 由香里が顔を赤くして目をらす。……あ、やべぇ。おさえがきかねー。アズキの体が熱くなる。

「アズキ、落ち着いて。私の上からどけて。深呼吸して。アズ……」

 アズキは由香里の口をキスでふさいだ。舌を入れてからめとる。唾液だえきと息がじりあう。そのまま欲情よくじょうにのみこまれ一気に押し流されていった……。

 由香里から白い夢の話を聞いたのは昼過ぎになってからだった。

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