第65話

 アズキは毎日、キツネやタカ、狼、クマ、サル、ヘビなど、あらゆる獣たちにつかまり連れ去られた。由香里は獣を追いかけ、アズキをうばって逃げ回った。やがて由香里は危機察知能力ききさっちのうりょくまし、獣たちが襲ってくる前にアズキをかかえて逃げて安全な場所へ隠れるようになった。

 するとナルシィは、ツッチーを送り込んだ。

「うむ。ツッチー、お前が足手あしでまといになって、由香里が戦わざるをないように仕向しむけるのだ」

 ツッチーはいやな顔をした。

「むん。わしは由香里に戦うすべを教えているのだぞ。それなのに逃げてどうする。アズキもわざと捕まっているのだ。お前も由香里の修業しゅぎょうのために一肌脱ひとはだぬぐのだ」

 そんなことはつゆ知らず、由香里はケガをしたツッチーをかばって戦った。

 相手が嫌がる仕掛しかけを考えわなけ、殺さぬように軽傷でむように、刃物ではなく棒を使ってはらう、あの手この手で獣たちを追い払った。

 どうやっても由香里にはかなわないとさとった獣たちは、とうとうアズキをあきらめた。こうしてアズキ争奪戦は幕を閉じた。

 そして由香里は血を吐いた。




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