第57話

 由香里はポカンと口をけた。……本の中? どういうこと? しおりになって本の間にはさまるのかしらん?

「アズキも一緒だよ。本に選ばれたのは由香里だけど、アズキがいないと君の体がこわれてしまう。そのへんもふくめてアイリスが話しをつけているところだよ」

「……よくわからないんだけど、どうやって……?」

 「本をひらくだけだよ。そうすれば体ごと中に入る」

「……よくわからないけど、入るんだ……」

「それで決まりね!」

 そう言ってアイリスが立ち上がった。ほのかな光が消えている。

「話しはついたわ。先にナルキッス。その後でハニービーンよ」

 チャシュが由香里とアズキに体をこすりつけた。

「幸運を祈るよ」

「由香里、目的を忘れないでね」

 アイリスは由香里をぎゅっと抱きしめた。「え、え、何? アイリス?」

 ハグにれない由香里は戸惑とまどう。

「私とチャシュはここで待ってるわ。だから必ず戻ってきて」

 アイリスの言葉に、由香里はうなずいた。

 腕にアズキをしっかり抱いて、由香里は本を開いた。


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