第47話

 由香里の体から力が抜けて……アズキにもたれかかってくる……。

 寝たかな? 夢を見なければいいが……。由香里のうなじにも髪にも宮殿の臭いはついていない。アズキは少しホッとした。アイリスの作った服がバリアの役目をたしたのだろう。

 由香里は夢から宮殿へ引き込まれている。夢と宮殿がつながっている。夢に結界はかない。……厄介やっかいだな。アズキは風呂の天井を見ながら考え込んだ。

 由香里が心をじたのは、夢の侵入しんにゅうふせぐためか……。それでも防ぎきれなくて、このままでは心の壁が夢にこわされると感じて起きたのか……。そして今、夢が怖くて眠れない……。マズいな。由香里をどこかへ隠さないと。夢が入ってこれない場所……。それは、どこだ?

 アズキが湯の中どっぷりと考え事にひたっていると、腕の中ふわっと由香里が目を覚ました。

「……ん?」

 由香里はアズキを見て……今の状況じょうきょうかたまって……ザバッと体を離した。湯がれて由香里の顔がっか。何その反応。めっちゃかわいいじゃねーか。激カワだ。

 「あ……、も、もう上がるね。アズキはゆっくり入ってて」

 走り去る裸の由香里。その後ろ姿を目で追って、いいながめ、とアズキはニヤケ顔。あ、やべぇ。しずまれ、俺の下半身。アズキはゆっくり風呂から上がった。


 

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