第45話

 心地よいだるさの中でまどろんでいた由香里は、ふと、違和感いわかんを覚えて目を開けた……。

 視界一面しかいいちめんぼんやり白い……。ガス? きり? もや? 由香里はあわいクリーム色のTシャツ1枚身にけて立っていた。

 ここは、どこ?

 裸足はだし足裏あしうらの感触は、硬くて冷たいツルツルの……石の床。白いもやが立ちこめる部屋の中、天井も壁も見えない。よどんだ空気がどんより重い。

 湿しめが……ねばびてきた……。ねっとりとした空気が体にまとわりついてくる。白いモヤに……灰がじる。小さな声がささやき声が……黒い陽炎かげろうのようにらめきただよい……白色はくしょくを灰へ黒へと変えてゆく。押し殺された感情があふれ出し……黒いもやのように立ちこめる……。

 さびしい……かなしい……四面楚歌しめんそか……わたしはモノ……消耗品しょうもうひん……かわりはある……ココロコロシタコロサレタ……いうとおりにしてたのに……ステラレタ……いいコにガンバったノニ……ヒドい……。

 ここは、女神の宮殿。立ちめる血のにおい。黒いもやうずく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る