第41話

 翌朝、由香里はヨロヨロとベッドからい出した。

 まさか一晩中ベッドの中でアズキに抱かれるなんて……。アズキは人の姿をしたエロウサギだ。全身疲労ぜんしんひろうでぐったりと、由香里は裸のまま床にへたり込んだ。

「おはよう由香里。大丈夫か?」

 由香里は驚いて飛び上がった。

「お、起きてたの⁉」

 ベッドの上からアズキの上半身がのぞく。裸だ。由香里はあわてて目をそらし背を向けた。

「……ツガイモに抱かれすぎて死んだ女神は多いの?」

 アズキが笑い出す。

「いないない。ひとりもいないって。そんなんで死ぬかよ」

「……そうなんだ」

 由香里は辺りを見回した。

「服、どこ?」

「ほらよ」

 頭の上にクリーム色のTシャツがフワリと落ちてきた。と同時にトンッと目の前にウサギが着地。

「ありがとう」

 由香里はTシャツを着ると、ウサギの頭をなでなでした。ウサギなら安心。身の危険を感じない。ただただカワイイ。

「おはようアズキ」

 由香里のお腹がグーと鳴った。ウサギが笑う。

「朝ご飯にしようぜ。スープしかねーけどな」

 オレンジ色のウサギが床の上。そのとなりにどんぶりふたつ。いいにおい。

 由香里はアズキの隣に座ると、どんぶりを手に取った。

「いただきます」

「ます」

 アズキはおちょぼ口にストローをくわえると、またたにどんぶり1杯のスープを吸い上げ飲みした。

「ごち」

 アズキは満足そうに寝そべって、由香里を見上げた。お腹がたぷん。

「とうした? 由香里、飲まないのか? うまいぞ」

「あ、うん。飲むけど。アズキ、ストロー使うんだ。ウサギの姿でも人と同じ物を食べて問題ないの?」

「ないぜ。ここはモルモフだからな。由香里の世界にいた時は、草かラビットフードしか体が受け付けなかったけどな」

「そうなんだ」

「あ、でも、おやつはうまかったな。ジャムとかサトウキビとか何とかの甘いやつはうまかった」

 ウサギはおやつを思い出し口をモグモグさせた。

 由香里もスープを飲み干した。

 「ごちそうさまでした」





 

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