第2章 灰色の世界

第18話

 由香里ゆかり意識いしきが戻った。

 ヤベェ、このタイミングは最悪だ。チャラはめちゃくちゃあせったが、ラストスパートに入った体は止まらない。そのまま一気いっきに由香里の中へ、せいを放った……。

「由香里……」

「……服、着て」

 小さな声が返ってきた。

 チャラ男はあわてて服を着た。

「……チャラ男、ツガイモだったんだ……」

 由香里の口からため息のようなつぶやきがもれた。 

「え?チャラ男って、おれのこと?」

「あっ、えっと…す、すみません……。その、あの、名前がわからなかったので、その、服がチャラそうだったので……、すみません」

 うそだろ? マジかよ。イケメンじゃなくてチャラ男かよ。由香里にチャラいと思われていたなんて……。俺の服、超イケてるはずなんだけどなぁ。由香里は服とかオシャレに興味きょうみないからなぁ。

 チャラ男はガックリ、肩を落としてため息ひとつ。

「そういや名前、言ってなかったもんな。俺のこと、ちゃんと説明してから抱くつもりだったんだけど……。順番が逆になってしまって、すまない。悪かった」

 由香里の反応は、まばたきひとつ。

「俺はツガイモで、女神召喚しょうかんの時にトラブってモルモフから異世界に、由香里の世界に落ちたんだ。超イケメンの俺は異世界でもモテまくりで、毎日バラ色、毎月違う女の子とハネムーン……」

 由香里が引いている……。

 確かにちょっとチャラいかもしんねーけど、モテる男は女の子からみたらすっげー魅力的みりょくてきなんじゃねーのか? 由香里の目にはマイナスなのか? イケメンじゃないのか? タイプじゃないのか? 由香里のこのみがわかんねー。

 心の中でひとしきりうめいてから、チャラ男は気を取り直して説明を続けた。

「それが、ある日いきなりウサギになって、人に戻れなくなった。人とウサギじゃ天国と地獄でさ……このままここで死ぬんだなぁ〜って思ってたら、由香里にひろわれた。九死きゅうし一生いっしょうってやつ」

 チャラ男は由香里の目の前で、人からウサギに姿を変えた。由香里の目が、まん丸になる。

「俺は、ツガイモでチャラ男でアズキなんだ。そーゆーことで、ちょっと待ってて。アイリスとチャシュを呼んでくるから」

 そう言うと、オレンジ色のウサギはかべの向こうへ消えた。

「アズキが……うそでしょ」

 由香里は呆然ぼうぜんつぶやいた。








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