第12話

 由香里が話し終えてもアイリスは腹を抱えて笑っていた。ザーザーザーザー大爆笑。チャシュも体をくねらせて笑っている。

 由香里はキョトン。今の話しのどこがそんなにウケたのだろう? よくわかんないけど、まぁいいや。笑いのツボは人それぞれだし、それ以前にここは異世界だし。そもそもの感覚が違うのかもしれない。

 アイリスの笑いがおさまるのを待ってから、由香里は頼んでみた。

「えっと、あの、アズキにエサをあげてほしいんだけど、頼んでいい? それと、あの、少し疲れたから、眠りたいから、ひとりにしてほしい……」

 アイリスはにっこり笑ってうなずいた。アズキを抱き上げ、肩の上にチャシュを乗せ、ザッザッと笑いながらアイリスは、壁の向こうに消えた……。

 由香里はひとりになった。

 静かな部屋の中に、由香里の苦しげな呼吸音。息が苦しい。脈拍連打みゃくはくれんだの乱れ打ち! 目がかすむ。体中が痛かった。

【アズキをよろしくお願いします】

 由香里はフリップボードに書いて壁に立てかけ、その隣に白い小冊子を置いた。この冊子は次の女神が読むのだろう。

 これでよし。由香里はフリップボードをながめて満足した。これで心置こころおきなくける。シマと祖父じいちゃん祖母ばあちゃんに、会えるだろうか。会えたらうれしいな。ほっと息をいて由香里はベッドに倒れ込んだ。

 今まで何とかかろうじておさえ込んでいたものが、気を抜いた途端とたん、一気にきた。

 

 


 

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