第6話

 ふと、何か音がしたような気がして、由香里は顔を上げた。

 ドアのない部屋の中、いつの間にか人がいた! 由香里は驚いて息をのむ。どこから入った⁉ 二十歳ぐらいの男女。女の肩には猫が一匹乗っている。

 ズキン! と右肩が痛んだ。さっきよりも体がだるい。息が苦しい。座っているのに、立ちくらみのようにふらふらする……。立ち上がれなかった。由香里はベッドに腰かけたまま、目の前の二人と一匹を見上げた。

 男は美男びなんで緑色の目に栗毛くりげあざやかな色をりばめたド派手はでな服を着ている。まるで南国のカラフルな鳥みたい。なんかチャラそう。女も美女びじょで青い目ブロンド青い服。二人ともモデルかな? 猫も美猫びねこで目は金色、毛の色は銀地ぎんじに黒の縞模様しまもよう。品種はアメリカンショートヘアーかな? チャラ男と美女は由香里を見て、口をパクパクさせた。まるで金魚みたい。

 ザーザーと電波の悪いラジオのノイズ。二人の口からザーザー音? どうなってるの?  由香里は首をかしげた。人型のラジオだろうか? そういえば、白い部屋でも同じ音が流れていた……。あれは、男達の話し声? もしかして、おかしいのは私の耳? 体があちこち痛いのは、ケガのせいではないのかも……。適応てきおうできてないのかも……。

 あぁ、そうか。由香里はふるえる息を吐き出した。私の体が、このモルモフ界にえられないんだ。

 

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