第6話

「まあ、僕はどこにでもいる平凡な高校生だ」

「平凡な高校生が死ぬ日がわかるの?」

「僕だっていつから見え始めたのなんかわからないよ。でも、気づけば見えるようになっていた」

「そうなんだ」

「ああ…両親に妹もいて、確かに僕は普通に今も幸せだ」

「そっか」

「だからこそ、わかっている」

「何を?」

「この幸せが明日壊れてしまうことをだ」

「そうだね」


わかっていた。

明日死ぬ。

そのことがあって、僕はその日まで、いい兄でありいい子供として生きてきた。

それが意味のあることなのかもわからないまま…

でも、本当にその日々が幸せだったのは確かだった。

だから口にしていた。


「死ぬのが怖いんだ」

「そっか」

「お前は死ぬのは怖くないのか?」

「あたしはだって、何もないからなー…」

「そうか」


彼女は笑う。

今日死ぬはずだからこそ、お互いに見えているからこそ、話せることだった。

本当は怖い、

死ぬということが、どういうことになるのかわからないからこそ怖い。

だから死ぬ日がわかっている恐怖を普通に過ごすことで、なんとか紛らわしていたのに、彼女に出会っておかしくなったのだろうか?


「ねえ…」

「なんだ?」

「だったら、あたしに少し考えがあるんだけど」

「なんだ?」

「あんたの家、連れて行ってよ」

「はあ?」

「いいじゃん、恋人としてのお願いよ」


だから、彼女からそう言われたときには戸惑った。

でも僕のことを見つめる目が真剣で、僕はうなずいた。


「じゃあ、決まりね!」


そう言うと、彼女はブラコンから飛び降りる。


「ほら、行くわよ」


彼女は僕の手を取ると歩きだす。


「道わかるのか?」

「ふん、勘よ」

「お前な」

「何よ!」


僕たちはそう言って笑った。

さっきまで泣いていたのが嘘のように笑いあった。

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