第5話
「それで、改まって話って何をするんだよ…」
「決まってるでしょ、あたしのことよ」
「はあ?」
「まあ、どうせ死ぬんだし、恋人にくらいは話しても悪くないでしょ」
「話すっていうなら聞いてやるよ」
僕たちは、あの最初の公園に来ていた。
遊んでいたこともあって、時刻は夕方へと向かっていた。
僕たちはブランコに座る。
どちらかが言ったということもなく、なんとなくお互いにそこに座った。
「それで…」
「ふふーん、そうね。まずはこの超絶美少女であるあたしは高校二年生なのよ。」
「そうかい…って僕と同じ年齢なのかよ」
「え?あたしの方が嫌なんだけど」
「おーい、僕たちって恋人同士だったよな。なんでそんなに嫌がるんだよ」
「先に嫌がったのはあんたでしょ?」
「そうだけど」
「だったら、言わないでよ」
「まあ…」
「ほら、話がそれたじゃない」
「すまないって」
「まあ、謝ってもらったから戻すけどさ」
そうして彼女はブランコを少し漕ぎ始めると話を再度始める。
「あたしはさ、両親の顔をちゃんと見たことないんだ?」
「どういうことだ?」
「あれよ、事故で亡くなったってやつ」
「そうなのか?」
「そうよ。それは事故だった、一応同じときにあたしもいたらしんだけど、どうやらあたしだけ助かっちゃったみたいなんだよね」
「そうなのか?」
「うん、まあね」
「そこからは?」
「ほら、よくあるでしょ…育ててくれるって人がいなくて、施設ね」
「そうか…」
「何をしんみりしてるのよ」
「いや、お前がしんみりしたことを言ったんだろ?」
彼女は自分の過去にあったことを重い空気で言ったと思ったのに、すぐに煽ってくる。
あれだ、完全に雰囲気をぶち壊している。
というのに、彼女は僕のことを睨んでいた。
「なんだよ…」
「いや、あたしのことは話したのに、あんたは自分のことを話してくれないのかって思って」
「なんで教えなくちゃいけないんだよ」
「恋人なんだし、いいじゃない」
「どういう理屈だよ」
「それに話したほうが、あんたのためにもなるわよ」
「どういう意味だよ」
「だって、あんたわね、泣いてるんだからね」
「はあ?」
言われていることがわからなかった僕は、目を触ると、確かに泣いていた。
意味がわからない。
死は確かにいつかやってくるもので、それが明日になろうが、僕は普通に生きれればと思っていたのに…
でも違ったのだろうか?
話せば、この涙はとまるのだろうか?
「じゃあ、聞けよ」
僕は自分のことを話し始めた。
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