第4話
「は、はあ?」
「だから、どうせだから最初で最後の恋人になってもらおうと思って!」
「いや、そんなこと…」
「あんたが言い出そうとしたことでしょ?」
「そうかもしれないけど…」
「ふっふっふ…動揺しているわね」
「なんだよ、冗談かよ?」
「本気よ!」
「はあ?」
「そうと決まれば行くわよ」
「どこにだよ!」
「ふふん」
少女は不適に笑うと歩きだす。
ついてこいということだろう。
そうして歩き始めて連れていかれたのは、映画館。
次に水族館、美術館…
「いや、どれだけ行く気なんだよ」
「それはだって、別に今日で恋人が終わりなんだし、恋人と一緒に行きたい場所に行ってるだけよ」
「なんだと…」
「覚悟してよね。まだまだ行くわよ」
「まじかよ」
「当たり前でしょ、死ぬことを邪魔した罰ね」
「勘弁してくれよ」
そうして僕は解放されることもなく午前中にかなりの数の、恋人が行くであろう場所に連れていかされた。
最初はうんざりとしていた僕ではあったが、確かに明日死ぬとなればこういうのもいいのかもしれないと思って回っていた。
そうこうしているうちに昼食になった。
「それで、どうしてラーメンなんだ?」
「さっき大人の話をしたときにラーメンの話をしたから、食べたくなったのよ」
「最後の晩餐になるかもしれないものが、ラーメンでいいのか?」
「ふん、バカね。」
「何がだよ」
「何を食べるとかじゃないのよ、誰と食べるかが重要だってわかってるでしょ?」
「はあ?」
「ねえ…」
「なんだ?」
「食べ終わったら、もう一度話をしましょう」
「わかったよ」
急に真剣になった少女に、僕は何も言うことができずに、ラーメンをすすった。
そして時間は過ぎていく。
タイムリミットはいつなのかわからない。
それでも少女の頭に浮かぶ日付は今日で動かない。
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