第3話

「って、ここってゲーセンかよ!」

「当たり前でしょ、どんな想像していたのよ」


ニタニタと笑いながら、少女は僕の顔を覗き込んで聞いてくる。

僕はその鬱陶しい顔からそらす。


「いや、ラーメン屋とか?」

「く…もっと焦るとかしないのあんたは…」

「いや、別にそういうことをしてくる人がいるからな」

「そうなんだ…」


僕がそう口にすると、お互いに気まずくなる。

少女の言いたいことはわかっていた。

明日死ぬというのに、そんな人がいるというのかということだろう。

でも、それはたぶんお互いにいるだろう。

だからこそ、死ぬタイミングを自分で決めたいということはなんとなくわかる。

僕は暗くなり始めていた空気を換えるように、声を出した。


「よし、それじゃやるか!」

「な、何よ、急に?」

「あー?そっちが大人の遊びを教えてくれるんだろ?」

「ば、ばかね、当たり前よ」


そして僕たちはゲームセンターで遊び始めた。


「な、なんで、そんなにうまいのよ」

「ふ…僕はこう見えても、できる男だからな」

「ふーん、別にゲームセンターだけがうまくてもモテないと思うわよ」

「ぐは…そんなことはないはずだと思うがな」

「本当に?」

「いや、たぶん」

「それじゃ、彼女はいるの?」

「いるなら、死ぬとわかってる前日くらい一緒にいたいと思うだろう?思わないのか?」

「いや、そんなこと言われても、あたしにもいたことないからわかるわけないじゃない…」

「そうなのか?」

「だからって、告白なんてしないでよ」

「どうしてだ?」

「それをあたしに言わせるの?」


僕たちはまた、無言になる。

お互いに死ぬ日がわかっている。

だからこそ、恋人になっても一日だけだとわかっていた。

意味のないことになってしまう、そう思っているだろう。

二度目の気まずさにどうしようかと考えていたときだった。

少女は口を開く。


「いや、なっちょおうよ恋人」


そして、そう言ったのだ。

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