第2話

「それで、どうしてあたしのことを助けたのよ?」

「それは、目の前で死なれるなんてさすがに目覚めが悪いからだよ」

「何言っているのよ、別にあなたに迷惑をかけてるわけじゃないでしょ?」

「いや、かかってるんだよ。トラウマだろ、普通に考えて…」

「明日死ぬんだったら、そんなトラウマも一瞬だろ?」

「そうかもしれないけど、あるだろ、そういうの…」

「ふん」


どうやら助けたことにご立腹のようだった。

せっかく助けたというのに、どうしろっていうんだよ。

それに、死ぬ日が見えるのなら、タイミングくらい自分で選ぶか…

僕は考えたこともなかった。

その日がくるまで、普通に生きていこうとしただけだ。

そんな僕のことを少女はジト目で見る。


「なんだよ?」

「別に、本当に見えるの?」

「本当だよ」

「それじゃ、あの人の数字は?」

「ああ、あの人は…だ」

「ふん…嘘は言っていないようね」

「だから、そう言ってるだろ」

「ふん」


本当にお互いに死ぬ日が見えるみたいだ。

そして今日死ぬことになっている彼女は、さっき自分で死のうとしたということだ。

でも、そこできになっていることがあった。


「なあ…」

「何よ!」

「あの高さで死ねると思うか?」

「あ、当たり所が悪かったらありえるでしょ」

「そうかもしれないけどな…」


確かにありえるかもしれないけど、それにしては確実性がない場所だと思った。

死ぬというであれば、それ相応高さがある場所に行けば、確実に死ぬことができるというのに…

それをしなかったというのは、少女が多少なりとも死ぬという恐怖と戦っているからだろう。

僕は何も言うこともなく、隣で怒っている少女になんと声をかけようとしていたときだった。

勢いよく少女は前に一歩踏み出す。


「ねえ、あんた」

「なんだ?」

「死ぬ気力がそがれたのはあんたのせいだからさ、今から付き合いなさいよ」

「どこにだよ!」

「もちろん、大人の遊び場よ」

「なんだと…」


そうして、僕は連れていかれた。

ある場所へと…

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