今日死ぬ君と明日死ぬ僕は…
美しい海は秋
第1話
僕ももう少しで死ぬ。
わかっていた。
人の死ぬ日が見えるようになったのはいつからだろうか?
覚えてはいない。
それでもわかることは、僕が明日死ぬことだけだ。
明日死ぬのだから、何もしなくていい。
いや、いつも通り過ごせばいい。
そう思っていたはずだった。
だからいつものように朝起きて、学校に向かっていた。
朝、顔を洗うときに鏡で確認したけど、間違いはなかった。
だからわかっている。
僕は明日死ぬのだろう。
それまで見てきた人のことで、見えるものが絶対であるとわかっていた。
何度か見えた人の命を救おうと頑張ったことはあったけれど、それは意味もなく終わった。
当たり前だ。
初めて出会った人に今日死にますよ、なんてことを言われてしまえば、頭がおかしいと思われても仕方ない。
わかっている。
わかっているから変えられない。
矛盾しているような考えに、僕は自虐気味に笑った。
だから、僕はそれを見たときにスルーした。
目の前から歩いてくる少女は、今日死ぬと頭に書かれていた。
明日死ぬ僕には何もできないな。
そう考えて、スルーする。
はずだったのに、少女のことを目で追った。
少女は公園に入ると、それなりに高いけれど怪我するくらいかなと思うような遊具に上ったのだ。
そして…
「よし、私は自分の意思で今から死ぬぞー!」
そんなことを大きな声で宣言すると、遊具の上からジャンプしたのだった。
僕は気づいたときには走っていた。
背中のカバンがつぶれる感覚と、上から落ちてきた少女に体をつぶされることになった僕は「ぐへっ」と変な声を出す。
「あ、あれ、死んでない?」
「イタタタタ…」
「ちょっと、なんで邪魔しているのよ」
「いや、それが守ってもらったやつにかける言葉じゃないだろ!」
「なによ、勝手に助けてきたのはあんたのほうでしょう」
「なんだと!」
「何よ!別に今日死ぬんだから、タイミングくらい選ばせてよ」
「はあ、そんなことお前にわかるのかよ?」
「わかるわよ。だってあたしは死ぬ日が見えるんだから!」
「は?」
「どうせ、頭おかしいっていうんでしょ?みんなそうだったからね」
「いや、僕も…」
「は?」
こうして、僕は今日死ぬはずの少女と出会った。
お互いに死ぬ日が見える。
そんなおかしな二人の時間が動きだす。
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