第5話

「…それで?処刑ってのは何処でやるんだ?」

「ここの一番下でござるな」


この監獄はすり鉢状になっているんだがその一番下ちょっとした広場になってる所で処刑するらしい


ちなみに中央部分は吹き抜けだ、危なくない?


そこ以外だと他の囚人と一緒に逃げる可能性があるのと単純に逃げ辛くする為に一番下でやるらしい


「はぁ…不安だ…」


こんなに色んな事態が予測されてるって今まで何回脱獄事件が起こったんだよ…


「あー、全身を拘束具でガチガチに拘束するでござるから、大丈夫でござるよ」

「なるほど、暴れても大丈夫なようにするのか」


俺達の存在はあくまで保険って事か、なら安心だわ

…いや、それでも俺より強い奴が一人は欲しい所だけどな


「…遅くなった、急ぐ」

「む?本当でござるな、まだ走れば間に合うから走るでござるよ」


えっ、もうそんな時間なの!?

この二人は…まぁ抱えた方が速いか!


「…?なにこれ?」

「ひゃぁ!?いや、ちょっ…これは…」


二人を小脇に抱えて走り最下層と思わしき広場に辿り付く、割りと遠かった


それとここで最下層はここで合ってるのか御剣さんに確認を取る


「御剣さん、ここで良いんですよね?」

「うむ…ここで処刑が行われるでござる」


「そうか…それでその囚人ってのは?

「まだ居ないでござるな、そろそろ奴が運ばれて来るはずでござる」


その瞬間、後ろから音が聞こえてくる

振り向くとガチガチに拘束された男とそれを運ぶ

看守さんが居た


「おお、もう来ていたんですね、今回の処刑を実行する九坂と申します」

「あ、宜しくお願いします」


この人が今回の処刑の実行者らしい

俺たちが殺す訳じゃないんだ


「それでは警備の方も揃っていますしさっさと奴の処刑を終わらせましょう、そうしないと…」

「しないと?」


そんなに貯めてどうしたんだ?

めっちゃ恐ろしい事が起こるとか?


「他の囚人が処刑を嗅ぎつけ同時脱走を始めます」

「早くやりましょう!」


あまりにヤバすぎる…

大惨事になる前に処刑を急ごう


「まずは警備の皆様方に銃をお配りします、戦う事になったら躊躇わず撃って下さい」


拳銃まで支給されてちょっと安心していると…

本当にさっさと進めるらしい九坂さんはこう言った


「では早速奴をギロチンに…」


そうして九坂さんが奴に近づいた瞬間、奴を、伊藤拘束していた拘束具が溶けた


「よぉーし、拘束具はもうないな!それじゃさっさと俺も逃げますか!死んでくれ!」


軽い調子で拘束具を破壊した伊藤は手を九坂さんに向け、異能を発動する


「【電撃操作エレキ】」


俺は反射的に九坂さんを庇い

電撃を身体で受ける、だが俺は無傷だ


「あれ?無傷?」


だが電撃を食らった筈の俺は制服こそ無くなったものの俺自身はまったくの無傷だった


「…は?無傷!?マジかよ…異能も進化して攻撃力には結構自信あったんだけどなぁ…」


異能が…進化?

いまあいつ何気に無傷がどうとかよりも気になる事言わなかったか?


「御剣、異能が進化するなんてありえるのか?」


唖然としている御剣に聞いてみると何故か伊藤がこう答える


「異能の進化は基本だぜ?【電撃操作エレキ】に進化するまで2回も進化を経験したしな」


なるほど、異能は進化するのか

でもなんでお前が答えるんだよ、余裕か


「なるほど、参考になったよ、でもお前には聞いてないんだわ」


俺は余裕たっぷりの伊藤に向かって発砲する

影で攻撃しても良かったが…影は九坂さんの防御に使いたかった


「うおっ!?躊躇い無しかよ!?【電撃操作エレキ】!」


驚きながらも奴は一瞬で電撃を生成して、壁として固めることで全ての弾丸を溶かしきった…が


その隙に俺は奴の懐に潜り込み奴を殴る

俺の身体は電撃を通さない、つまり俺の拳はこと今においては拳銃より有効な攻撃である


「【電撃操作エレキ】ィ!】


奴も反射的に俺に向かって雷撃を打つが俺は無傷

そのまま奴を押し倒し拳銃を突きつける


この距離なら俺に電撃が効かない以上銃弾を防ぐのは不可能だ


「…なぁ伊藤、俺が無傷だったのはなんでだ?」

「知らねぇ」

「そうか」


…会話が長続きしない

いくら犯罪者でも人殺しは嫌なんだが


「…殺さないのか?」


俺は深呼吸して、覚悟を決める


「…いいや、殺す」


俺は押し付けていた拳銃の引き金を引く

奴はそのまま動かなくなった、死んだんだろう


気分は非常に悪いがこれで一件落着…

そう思った矢先、突然監獄内に警報音が鳴り響く


「九坂さん!これは!?」

「囚人が脱走した時の警報です!行きましょう!」


なんでこうなるの?

アルザレル様、もしかして性格悪かったりする?

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