28.
しかし、俺の心には、まだ、エリーゼへの恨みつらみが残っているのも事実なのだ。
そんな俺に、アンナは優しく微笑んでくれた。
その笑顔に、俺は、思わず、見惚れてしまった。
俺が、そんな事を考えていたら、いきなり、俺の目の前に、光の玉が飛んできた。
俺は、その光に、一瞬、目を奪われてしまった。
その光が消えたと思ったら、そこには、一人の女性が立っていて
その女性は、俺達を見ると、にっこりと笑って、挨拶をしてきた。
「初めまして、私の名前は、ミフィア・シェヴェロウスキーですわ、エリーゼお姉様の妹です」
その言葉に、俺は、驚きを隠せなかった。
だって、エリーゼには、妹がいるなんて聞いたことがなかったからだった。
俺は、そんな、エリーゼの妹の、ミフィアに、つい、聞いてしまった。
だって、あまりにも、エリーゼにそっくりだったからだった。
「エリーゼには、妹がいたのか?」
俺の問いかけに、ミフィアは、俺をじっと見つめてきた。
その瞳は、エリーゼと同じ、紫色の輝きを放っていて、俺は、その美しさに見とれてしまっていたのだ。
俺は、その美しい、紫の瞳に吸い込まれそうになっていた。
すると、俺の耳元に口を寄せてくる。
「お姉様を殺した、魔王様、お会いできて光栄ですわ」
その言葉に、俺は、耳を疑ってしまった。
だって、俺は、魔王に成る前は、人間だったはずだからだ。
なのに、どうして、魔王に成る前の俺を知っているんだ?
俺はその言葉に、驚きを隠せないままに、少女を見つめていた。
美しく整った顔は、確かに、エリーゼを何処か思わせる。
俺がその言葉の意味を考え込んでいる間に、ミフィアと名乗ったその娘は、にっこりと微笑む。
「さてと、私が今日から、エレミアさんに代わり、パーティーリーダーを務めることになりましたのよ、よろしくお願いしますわね」
そう言って、俺達に握手を求めてきた。
俺は、その手を取るべきか迷っていた。
だって、こいつは、エリーゼの血縁者だ。
しかも、エリーゼが殺されたと言ったのだ。信用できるはずがない。
そんな俺に、アンナが声を掛けてきた。
俺を心配するような声で、こんな事を言ってきたのだ。
「大丈夫? あんさん」
その言葉に、俺は我に返ると、アンナの方に視線を向けた。
そして、俺は、
「あ、ああ、すまない、アンナ、ちょっと、考え事してた」
「ほんまに?」
「ああ、すまんな、本当に」
俺は、そんな会話をしているうちに、ふと、思った。
今更ながらに気づいたのだ。
俺達は、なぜここにいるのだろうかと。
俺は、魔王を倒す為に旅をしていたはずだったのだけれど、どうもおかしい。
その事に、疑問を覚えた俺は、アンナに尋ねたのだ。
「なぁ、アンナ、魔王はどうしたんだっけ」
「魔王? あんさんが人に戻って消滅したんやろう? へんな、あんさんやわ」
俺は、その時、ようやく思い出したのだ。
俺が魔王に成って、この世界を闇に変えようとしたことを……、
そして、それを阻止するために、俺の大事な仲間達が俺を正気に戻してくれた事をそして、エリーゼに呼ばれて俺は
また魔王に成ってしまった。
つまり、ミフィアは王国が用意した、対魔王の秘儀があると言う事となる。
まえ、その役目を担っていたのはエリーゼだったが、エリーゼが死んだ事を何処からか知った王が第二の監視役として、ミフィアを差し向けたと言う事だろう。
「ミフィア、俺は、国でどういう扱いだ?」
「あんさん」
アンナが心配そうに言う。
当たり前だろう、エリーゼの不可解な死、パーティーリーダー交代にパーティーメンバーの加入……、俺への何らかの圧にしか見えない。
そして、俺自身も、そんな事は薄々感じ取っているのだが、その真意を確かめようとはしなかった。
俺はアンナに告げた。
「ああ、わかっている、俺もそう思う」
俺のその返事に、アンナは何とも言えない表情を浮かべていた。
俺はそんなアンナを安心させるようにこう言ってやった。
「大丈夫だ、俺はエリーゼに復讐したいわけじゃない」
俺はアンナにそう告げた。
その言葉に、少しだけアンナはほっとした表情を見せる。
俺を抱きしめて そのままキスをした。
俺はその唇を離すと、今度は、俺の方からアンナに深い口づけをする。
俺の気持ちを伝えてあげた。
アンナも俺の背中に腕を回して、しっかりと応えてくれる。
俺達のやり取りを、見ていたミフィアは目を細めて、何とも冷たい眼差しで、俺達を見つめていた。
その表情はまるで虫でも見るような目つきだった。
そして一言言い放った。
「あなたが、エリーゼお姉様を、殺したのですね」
その言葉に、俺は驚いた。
なんで? エリーゼの妹はエリーゼの事を知らないはずじゃなかったのか?
なんで、知ってるんだ?
そんな事を考えていたら、いきなり、アンナが俺の前に飛び出して来て
「エリーゼはんはうちらの大切な仲間や! その家族を侮辱する奴は許さんで!」
その言葉に、俺は少しだけ冷静になれた。
(そうだよ、エリーゼが死んで、悲しんでいる人は沢山いるんだよな?)
その言葉に、俺は思わずアンナを見た。
アンナはにっこりと微笑んでくれたけど、やっぱりどこか、無理しているような、寂しそうな笑みを宿して
そんな顔をさせたくはないのだけど……、でも、俺の心にはやはり、まだエリーゼに対する憎しみが残っていた。
その事だけは間違いがなかった。
俺にはまだ、エリーゼへの恨みつらみの感情が残っていて、俺に、ミフィアが話しかけてきたのだ。
「えっと、それでね、私のスキルが使えるみたいなのよ。
だから、これから、私は、私に出来る事をしていきたいのよ。
今まで、助けてもらった分、私にも何かできる事があると思うのよ」
はあ~あ!? こいつ一体何を言っているのだ?
正真正銘のお花畑脳なのか?
どうせ死ぬ運命なのに……。
そうは思ってみても、中々本当に、
その一歩が踏み出せない。
だって、あの時の事を思い出すだけでも、悔しくて仕方がないのだ。
そんな事を考え込んでいる俺にアンナが話し掛けてきたのだ。
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