26.

「エリーゼ、君は俺を一人で呼び出した」


「だって、魔王ロイスにいい子に成られては困るからね」


「俺は、魔王なんかじゃない」


「まだ、自覚が無いのかしら?」


そう言うと、エリーゼは、俺の耳元で甘く囁く。


「人々の悲鳴に心地よいとまで思うくせに」


俺は、その言葉に、何も言い返せなかった。

確かに、俺は、人々が恐怖する様を見て、楽しんでいたのだ。

そんな俺の表情を見ていたエリーゼは、さらに俺を追い詰める様な言葉を吐いたのである。


「婚約破棄された貴方は、私を見返そうとして旅をした、それは、私に対して、ただ、悔しいからだったのかしら?」


俺は、その言葉を聞いて、反論できなかった。

エリーゼの言っている事は事実なのだから、だから、俺は、エリーゼの言葉を否定できない。

俺は、そんなエリーゼの言葉に、どう答えればいいのか、わからなくなっていた。

俺が、黙っていると、エリーゼは、俺に語りかける。

その、エリーゼの瞳は真剣そのもので、その目で、俺を真っ直ぐに見つめていたのだ。


「貴方の中には、どす黒い、魂が眠っている、貴方が魔王化しないんじゃない、理性が吹き飛ぶからできないのよね、ラバン達を本当は殺したいんでしょう、そして、その、力を試したいと思っている、でも、それじゃあ、駄目よ、もっと、欲望に忠実に生きないと、魔王は倒せないわ、だから、私と来なさい、私が貴方を導いてあげるから」


エリーゼは、俺にそう言ってきたのだ。

そんなエリーゼの言葉に、俺は、エリーゼが何を言っているのか、全く理解が出来なかった。


魔王を倒す‥…?

俺が……?

どうして……。


「うるさい」


「ほら、やっぱり否定できない」


エリーゼは、俺にそう言って、笑みを浮かべた。

そんなエリーゼに、俺は、苦笑いしながら答えたのだ。

そんな俺に、エリーゼは、また、口を開く。

俺は、そんな、エリーゼの話を黙って聞いていた。

そして、エリーゼは、俺に問いかけてきたのだ。

まるで、俺の心の中を見透かすような、そんな質問だった。

エリーゼは、俺に質問を投げかけてきたのだ。


「貴方は、何のために強くなりたいの?」


俺は、その問いに答えることが出来なかった。

俺は、答えられなかったのだ。

そんな俺に、エリーゼは続けて言ってきた。


「答えられないの?まぁ、そうよね、だって、そんな事、考えたことないものね、だって、貴方は、今まで、周りの人間に言われるままに行動して

きただけなんだもの」


エリーゼは、そう言って、俺を嘲笑っていた。

俺は、その言葉を否定できないでいた。


「そ、そうだね」


俺がそう言うと、エリーゼは、また、俺を挑発するような発言をしてきたのだ。


「あら、認めちゃったね」


エリーゼは、俺を揶揄って楽しんでいるようだった。

そんなエリーゼに、俺は、反論する。


「別に、認めた訳じゃないけど……」


俺は、エリーゼにそう言ったのだが、エリーゼは、俺の言葉を聞くと、俺に言ってきた。


「でも、ロイスの心のどこかでは、きっと、誰かに助けて欲しいと思っているはずよ」


俺は、その言葉に何も言い返せなかった。

確かに、俺は、エリーゼに言われた通り、エリーゼに婚約破棄されてからはただただ、悔しくて見返したくて、

俺は、強くなろうとしたのだ。

それは、何故か?

俺を認めようとしなかった、エリーゼに少しでも認めて欲しかったから……。


でも、それは、結局叶わなかったのだ。

だから俺は、俺の力だけで、この世界で一番強い存在になろうとしたのだ。

エリーゼを見返す為に……

でも、そんな俺の思いはエリーゼには届かなかった。

俺の言葉を聞いたエリーゼは、またもや俺を煽るような発言をしてきたのだ。

エリーゼは、俺を揶揄いながらこう言った。


「どうする? 私は魔王である貴方が好き、認めてあげるわよ、でも、精霊術師は嫌い」


俺は、その言葉にムッとしたが、何も言い返せなかった。

そんな俺にエリーゼはさらに追い打ちをかけてくる。


「精霊術師であることに誇りを持ったロイスも嫌い」


その言葉にどれだけ、自分が傷付いたか、きっと、目の前にいる彼女は知らないだろう。

だって、あの時の俺は、ただただ、悔しかったんだ。

俺は、いつも、自信が無かった。


「貴方様の婚約者はしっかりしていると言うのに」


そう、良く言われていた自分が嫌だったのだから……。

だからこそ、エリーゼの言葉に俺は言い返せなかったのだ。

そんな俺に、エリーゼはまたもや、言葉をかけてきたのだ。


「ねぇ、貴方は、今のままでいいのかしら?」


俺は、その言葉に、すぐに反応することが出来ずにいた。

すると、エリーゼは、さらに俺を追い詰める様な言葉を吐いたのだ。


「魔王ロイスが、魔王化したら、もう誰も止められないわよ」


その言葉に、俺は、何も言うことが出来なかった。

なぜなら、その言葉は事実だったからだ。

魔王になったら、誰にも止めることは出来ないのだ。

そんな俺にエリーゼは、言葉を続ける。


「だから、私が、貴方を導いてあげる」


エリーゼの言葉に、俺は、何も言うことが出来なかった。

そんな俺に、エリーゼはまたもや、俺を追い詰める様な言葉を吐いたのだ。

エリーゼは、俺に、こんな言葉を吐いた。


「だって、今の貴方は人間じみているから、だから嫌いなの……うふふ、魔王に戻って」


俺は、その言葉に戸惑ったのだ。

そんな、俺を見つめるエリーゼの視線は冷たかった。

まるで、汚い物を見るかのような、そんな目付きだった。

俺は、そんな、エリーゼの表情を見て、胸が締め付けられるように痛くなったのだ。

そして、俺の中で、何かが崩れ落ちるような音が聞こえてきた。

その音は、きっと、心が壊れそうな音だろう。


思い出した、魔王に成った時も、同じ風に声を掛けられた。

結果、魔王として動こうとしていたのは事実である。


「止めろ! 俺が魔王になる前に、殺してくれ!!」


俺は、そう言って懇願した。

そんな、俺の悲鳴にも似た叫びを聞いて、彼女は、満足そうに微笑んでいたのだ。

エリーゼは俺に向かってこう言った。

その目は、まるで悪魔のように光輝いていたのだ。

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