15.

でも、アルダンさんの表情はとても暗いかった、何か、思い詰めている様な、

そんな感じに見えたからだ。


アルダンさんは私の方を見てこういったのだ。

「魔王の事は、討伐隊に任せよう」


「何でですか」


「君では、浄化する前に死んでしまう、僕は、陛下の命令で、君達を守る義務がある」


それはそれは、とても、苦しそうな声色だった。

彼がどんな表情をしているのか見えない、でも、その声は、あまりにも辛そうで、悲しそうだった。

でも、私には、分からない、どうして、そこまでしてくれるのか?

そして、なぜ、私達を助けるのだろうか?

いや、違うわ、本当は分かっているの。

でも、分かりたくないだけかもしれない。

だって、分かってしまったら、きっと、今まで通りではいられないから。

このまま、ロイスやエリーゼを野放しにすれば、今度は国が亡ぶ大惨事になる。

だから、王国は決断しなければならない。

私たち以外、癒せない、癒せないのなら、殺してしまうしかないと、その決定を覆す事が出来る者は誰もいないのだ。

私達は、ロイスを浄化して、助けたい。


でも王国はロイスを救えないから、殺したいのである。

しかし、それで良いはずがない事は明白であった。

だからこそ、私達は一緒に、旅をした。

その結果、ロイスに返り討ちに会い、もう限界なのだ。


「諦めたくない、私が諦めたら、ロイスとエリーゼは王国に殺されるから」


そういいながら、泣きじゃくるエレミアの姿を見てアルナは、思った事がある。


「もしかして、この二人、似た者同士なのではないか?」


そんな事を考えながらも、今は目の前の敵を倒す事に集中した方が良いと判断したアルナは、弓を構えると、戦闘態勢に入ったのだった。

私の目の前で、闇のオーラを纏う漆黒の鎌を両手に持ち、不敵な笑みを浮かべる一人の女がいる。

その姿は妖艶で美しい美貌を持つ女性なのだが、その瞳には光が宿っておらず、人形の様な印象を受けるのだった。

そんな彼女の背後には大きな黒い翼があり、その大きさは、明らかに人間のモノではなく、悪魔族に近い姿をしているのが分かった。

エリーゼの変わり果てた姿に嘆かわしいと思ってしまう。


「それでいて、どうして、そんな姿に成ってまで、ロイスの為に尽そうとするの?」


エレミアの問いかけにもエリーゼはなにも答えようとしない。

ただただ、虚ろな瞳でこちらを見ているだけだった。

彼女の姿は一言で言えば不気味だった。

黒いドレス姿なのは変わらないのだが、黒い大きな翼は総長的できれいなのに、それでいてどこか悲しそう。


「私は貴女達を助けに来たのに、どうして理解してくれないの? このままでは、本当に、貴女達は殺されてしまうのよ」


私は彼女にそう語りかけたのだが、何も答えてくれなかったのだった。

その代わりに闇の魔力を纏いながら鎌を構えていたのだ。

もう、言葉は通じないのだろうと思って、私は構えた。

その時だった、私の目の前に闇の魔力弾が現れて爆発したのだ。

私は咄嗟に結界を張って防いだのだが、これはまずい状況だと悟った。

何故なら、目の前にいる女は笑っているからだ。


「ふふふっ」


そう笑いながら、闇の魔力を纏う鎌を片手に持つ、黒い羽の生えた、美女が、そこにいた。

そして、私に向かって、こう言ったのである。

私は、今、何を見ているのだろうと、思った。

目の前の光景が信じられなかった。


「どうして?なんで?どうしてなの?私はこんな事、望んでいない!」


目の前に広がるのは地獄絵図だった。

私が見ている先にいたのは魔族となったエリーゼだ。


「あはははっ!私は、生まれ変わったのよ!この力で世界を支配できるのだから!私は自由になるの!もう誰にも邪魔はさせないわ!」


そう言いながら高笑いをしていた彼女を見て思うのだ。

彼女は既に、壊れてしまっていると、それはとても悲しい事だ。

でも今の彼女は正気じゃない、ただ暴走しているだけだと思う。

だからこそ止めなければならないと思うのだ!

私は、覚悟を決める事にした。


「ねえ、目を覚ましてよ!私ね、本当は、貴女を、救いたいのよ!」


「うるさいわね!あんたは黙っていなさい!」


そういうと再び彼女は私に向けて攻撃してくるので、それを避ける。

すると彼女はそのまま追撃を仕掛けてくるので、私は防御に専念して攻撃を耐える。

しかし、彼女は容赦がなく攻撃の手を緩める事がない、このままでは確実にやられてしまうだろう。

それだけは絶対に避けたいと思っていた。


だって、私は絶対に死ぬわけにはいかないんだ!

なぜなら、私にはやりたい事があるから、どうしても成し遂げたい事があった。


「だから、早く、目を覚ますのよ!貴女はこんな人じゃないのよ!」


そう言って私は彼女の攻撃を躱しながら説得を続ける。

しかし彼女は私の言う事を聞いてくれない。

やはり、駄目かと思いながらも、それでも、諦めるわけにはいかなかったのだ!

ここで諦めてはだめだから、だから諦めてはいけないのだと、そう思っていたから!

そんな時だった、彼女が闇の魔力で作った刃を使って私を斬り付けてきた時だ、私の前に二人の人影が現れ私を庇ってくれたのだ。


その人影は二人とも見覚えのある人だった、その内の一人は言う、


「ここは、私達に任せて下さい」


もう一人が言う。

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