13.
それとも、エリーゼがロイスを魔王にした?
いや、それなら、何故最初から言わなかったのか……。
分からない、考えれば考えるほど分からないのだ。
そんな、思考を巡らせていると、いきなり後ろから肩を叩かれたので驚いてしまった。
振り返るとそこには、アルナが立っていたのだ。
どうやら、私に用があるらしいのだが、嫌な予感しかしない。
だって、今まで散々な目に合ってきたのだから、身構えてしまうのも仕方がないだろう。
それでも、聞かなければならない、そう思って聞いてみたのだが、彼女は予想外の答えを返してきたのだ。
「あんさんが魔王に成ったんですって?」
「え、ええ」
「エリーゼはんは罪の意識であんさんについて行ったのだとして、二人の過ちを正すのが貴女の役目や無いの?」
そうだ、でも、いっぱしの回復術死に堕ちた、私が魔王討伐なんて無理だろう。
そう思いたいのだが、やはり現実と言うのは残酷だ、国王陛下がこう言って来たのだ。
「魔王討伐は騎士団を使う、君の浄化魔法なら、ロイスも救えるかもしれないが、我が兵士なら、討伐する事になるだろう」
そう聞いてエレミアは俯いた。
「私に時間をくださいませんか、一年待っていただいて、ロイスが一年後もまだ魔王であるなら、討伐してください」
「それで、よろしいのですな?」
国王陛下は、そう言ったので、エレミアは静かに頷いたのだ。
そして、私は国王陛下に一礼をしてその場を後にしたのだった。
その晩、エレミアは夢を見た。
「エルドレア?」
「魔王ロイスから逃げてまいりました、エルドレアです、お久しぶりですね、エレミア」
私の枕元に、黄色い光の粒子がふわふわして見える。
「エルドレア、ロイスは」
「貴方の神聖魔法に宿らせてください、魔王を浄化できるのは強い回復術師だけですから」
身体に流れ込んでくる。
サラマンダーの暖かな炎が身体に入って来る。
そして、目が覚めた。
「エレミアはん、うなされていたようですけど、大丈夫なんです?」
それは、心配する、アルナさんの声だった。
(そっか、私、寝言言っていたんだ)
エレミアは慌てて起き上がると、そのまま支度をして、お城の中庭にある噴水の前で待っている事にした。
アルナさんは何かを察したらしく、静かにその場から離れていった。
気をつかってくれたのだろう。
彼女なりの優しさなのだと思う事にしたのだ。
それからしばらくして、約束の時間になると、アルナさんと、もう一人、知らない男の人が一緒に現れた。
(誰だろう?)
「陛下に同行するよう命じられました、アルダン兵士長であります、お二方の護衛を命じられました」
「護衛? ちなみに、前衛って貴方だけ?」
「は、自分だけであります」
「ありがとう、アルナ、これで何とか戦えるわね」
「このメンバーで魔王城まで行くのは良いとして、あんさん説得できるんですか?」
それを言われてしまうと、何も言えない、だけど、今はやるしかないんだ。
(私は、エレミア、ロイスの師にして、元・王女付き騎士、ロイスが魔王に堕ちたと言うのなら、私がかならず、浄化して見せる!)
そう思ったら、自然に、足が前に出た。
エレミアは頬を叩くとそのまま、
馬車に乗り込んだ。
ロイス達を追って、魔王城へと、向かうのであった。
それは、余りにも唐突であった。
ロイスの姿がどんな禍々しく成って居ようが……私がきっと助けて見せる!
「ところで、お二人とも、ロイス様とは長いんですか?」
アルダンさんが私達にそう言って来たので、私は少し考えてこう答えた。
多分、彼が言いたい事はこうだろう。
パーティーとしての付き合いが長いのかと言う事だろうと誤解が無いように口にしようとすれば
「あんさんは、アルナの夫ですわぁ」
と、とんでもない事を言うので、慌てて否定するも、 何故か、それが逆効果になってしまった様だった。
彼は、どうしていいか分からず、オロオロしていると、馬車が止まるのが分かった。
どうやら、目的地に着いたらしい。
私達はうっそうとした森の中の大きな城の門の前に立っていたのである。
すると、門番の男が声を掛けてきたのだった。
どうやら、この男、この城の関係者らしいのだが、どうも、胡散臭い感じがする。
それもそうだろう、いきなり、来て、しかも、ロイスのパーティーが現れたのだから
「魔王様の元仲間か、どうした?」
口調は穏やかだが、目が笑っていないのが分かる。
それに、嫌な汗が止まらない、これは恐らく……。
その時だった。
いきなり、巨大な雷が飛んできたので、とっさに回避行動を取るも、完全に避けきれずに腕をかすってしまった。
私は、直ぐに、神聖魔法で傷を癒すと、その男が話しかけてきたのだ。
どうやら、この男は、魔物らしいしかも上位種だ。
私一人で勝てる相手じゃないのが分かる。
なので私はアルナを見た。
大きく頷くアルナに私はこう答えた。
「昔のよしみで、魔王様に招待されましたの」
「それはまことか? まぁ、魔王様にも自我はあるからな、なら、通がよかろう」
そう言うと、私を中に入れてくれるのだった。
それにしても、まさか、こんな事になるなんてね、私なんかに、倒せるかしら?
そう思いながら、中に入っていく、中は思ったよりも静かであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます